終曲

(朗読ファイル)

終曲

ああ、やがて朝は近くなり
だらけた詩文を殴り書きし尽くした
僕もまたほとほと眠りに落ちるだろう
憎しみは現世をばかり潤して
僕は生前のいかなるものをも
何ものをも愛しはしなかったと
ひとりでこっそり呟いてみて
そしたら、きざったらしくて笑っちまって
ならばどうして明日(あす)は待ち遠しいやら
分かったものでもないのだけれど

今さら女々しさも自堕落もなくて
「またほざいてらあ」とのほほえみばかり
グラスに返すのはそれまたアホらしく
落書きいよいよルーズとなって
かねての気概もみな粉々になって
グラスの底から逃れ去るでしょう

も少し呑ませてくださいな
果てなき極みも見てみたい
そしたらこころの奥底で
死にとうなるかなこの僕も
冗談交じりに訊ねたら
「死にとうないよ」と返ってた
「ちぇっ、だらしがねえや」
けれども、それがいのちってもんだ
卑怯とさげすむものでもなし

カーテン開けば黒き御空の
あっと思って窓を放てば
夜の大気はいつしか朝の
予感溶かして風は吹き込む
爽やかばかりが初夏の息吹を
僕に伝えておりました

惑星要員たる僕ら一人一人の
思いは大地の無常に帰すのだとしても
それぞれの感慨もまた人には精一杯の
生きる勇気にも思われるくらいです

おやすみ、毎日毎日
変わることなき、そうおやすみ
みなさまにおやすみ、そして、自分自身に
お休みなさいと、今は静かに
伝えて眠ろう
また逢う日まで

2009/08/26

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