散会の辞

(朗読ファイル)

散会の辞

かくて得るべきものは得られず
うらやむでもなく筆置く僕の
屹然として意味なきことを悟る
奏楽のゆたかは奏でるかなたにあり
詩楽のゆたかは唱えるかなたにあるを
我(われ)、紙面にて済ますがゆえに価値なく
我、語らうがゆえにようやくの一歩を
踏み出したるがごとく噛みしめるなり
さりとて得られるもの少なく
てくてく歩みゆく果ての
終局はいつ来るやもしれず
されどもひたむき歩みゆくすがたの
それのみをまた拠り所となさんのみ

かくて得るべきべきものは得られず
うらやむでもなく筆置く僕の
さりとて一歩の踏みなすあたりを
我がよろこびとして噛みしめん時
わずかに得られしばかりを留め置き
邁進のささやかなる石碑とせんがため
この三十あまりの短き歌を
いま、亡き詩人のたましいに捧ぐ

   [二〇〇九年七月一四日]

2009/07/06

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