ノッコスタイル

(朗読なし)

ノッコスタイル

・下書きしか出来ていないので。推敲前の部分紹介。

作品のどこかの部分

 眠い眠いなんて思っていると、本当にいつの間にか夢のなかにいたりするんだから、ちょっと悲しくなってしまいます。髪の色を変えました。冬は嫌いだから、ちょっと秋色に帰して、彩りのイチョウみたいにおろしたての靴に合わせてみたの。マッチしている。ちょっぴり食欲をかき立てるようです。

 お昼はラーメンでした。

味噌にしようか、それとも激辛の塩かと思っていたところ、

「スッペシャル」

と書かれたところに、「帰ってきた辛味噌」とあります。

頼まなくては。

思わず、声を掛けたら、新人君みたいで、ハンディを打つ指が震えているのを発見。かわいい。まだ高校生なのかな。私も高校生に戻りたい、なんて書くと、また笑われてしまいそう。

入り日はぽかぽか。部屋に戻った私は、窓を開けましょう。枯葉舞い散る、掃除の季節。一人暮らしなので、すぐ億劫になって、下着まで取り込んだままになっているのは、いけてない。のだめを、思い出したから、思わず、

「ムキュー」

なんて奇声を上げたら、窓が開けっ放し。急に真っ赤。私は馬鹿なのかもしれない。

 始めた掃除だけど、いつの間にやらまた空想。あの奇声を聞かれて、入口でばったり会って、からかわれながらの恋人の、妄想街道をひた走る。やっぱりどうかしている。一人暮らしで寂しくなっちゃったのかしら。男なんてまるで動物なのに。猫の盛りの声が響くようで、ちょっと嫌らしい。潔癖症って訳じゃないけど。なんだか、駄目である。お腹が空いたのが原因でしょうか。

 右側にはたたまない、左側にはたたんだ服を並べて、折り曲げながらにまた脱線している。こころはいつもたまご色。ラーメンのハンディ君の震えを思い出して、一人で忍び笑い。我慢できなくなって、携帯に打ち込んだら、やっちゃんに送り付けてやりましょう。それにしても、あの辛味噌、卵の黄身がとろとろと、またすぐ欲しくなるような味。今度は、やっちゃんと出かけてみよう。

 いけない。掃除がまた消えちゃった。部屋が暗くなり始めました。早くしなくては、のろまがあだ名になってしまう。しかし災難。転がるCDを発見。おまけに、うっすら埃。払って仕舞おうと思ったら、ケースのなかにはすでに先客がいました。またいつもの入れ違い。探すたびに苦労するのが目に見えているのに、空いているところに入れちゃうから、もう何がなにやら分からないの。ちょっとやんぱち。

 でもCDの題名は内緒です。だって余計な詮索されて、わたしに興味持たれたら困ってしまいます。それが一人暮らしの心得。黙秘を貫いてみせましょう。

 大変。日が落ちたら部屋が淀んできました。あわてて掃除機を済ませましょう。明かりを付けたら、テンションも上がる。けれども掃除機は嫌い。音がうるさいんだもん。もっと、しつけをするべきかと思う。こんな近所迷惑、保健所行きもいいところだ。一世紀も掛けて、排ガスにまみれたエンジンとどっこいどっこい。本当に、技術革新とか科学とか、みんなの怯えるように、ぐんぐん進歩しているのでしょうか。なんだか、のろまな牛みたい。のっしのっし。私のマイペース。

 ああもう。また掃除を忘れています。頭のなかがちょっと心配。こんなさ迷う森みたいな、生き方を定められない女になってしまうとは思わなかった。実家から離れたのが原因かもしれません。侘びしさが込み上げてきて、ああ、やっちゃん、早くメール返してくんないかなあ。そうして私は、掃除がけ。それが終わったら、ようやくやっちゃんからメール。

私もハンディ、震えたことあるある。。。
激辛なんて食べられない(>_<)
お腹すいた。電車で移動中。
部屋戻って作るの面倒だから、ちょっとコンビニ。
まぼ丼、めっさおいすぃ(^▽^)

 またお腹が空いてくる。まぼ丼、私も買ってこようかな。こっちに来てから買い物ばかりで、レシピ知らずの女では悲しすぎます。実家では、少しはお手伝いもしたのに……って、よく考えたら、私は母の指図に任されて、「さしすせそ」さえしどろもどろだでした。料理の本を引っ張り出してみるけれど、けれども、やっぱり面倒。

 寒いんで振り向いたら、部屋が開けっ放しになっています。駄目な女。ベランダにはサンダル。ちょっと出向くと、西空はオレンジのくせに雲は灰化している。私の今日の耳飾りはピンク色。なのに誰も褒めてくれません。淋しさの夕暮れ。富士山の頭だけが、ちょっと風呂屋の名画っぽい。なんて、そんな風呂屋なんて、コントでしか見たことないけどね。空が落ちてくるに従って、こころが暮れなずんでくる。ちょっと惚けてみると、久しぶりにゆったり気分。風がちょっと涼しいから、誰かに肩を抱きしめられたい。なんて、急に一人ぼっちのぽつねんに打ちのめされたみたいで、恋人が欲しくなりはじめる。なんだ、だらしない。結局それが本音なのでしょうか。男なんて駄目な種族に、関わらずに歩いて行きたいと思います。そう願いながらも、一方では誰かに抱かれてみたい。矛盾が風に吹かれている。

「スーパーの蜜柑色して宵の月」

思わず俳句になっているのに気がついて、笑ってしまいました。時々チャンネルを回すと、俳句の番組なんかが流れていて、「や」とか「けり」とか、本当に穢れている。言葉を蔑ろにしているのです。こころと結びついていなくって、偽物くさいので、私は嫌い。だけどこんな句だったら、結構いけてる気がします。もう一回だけ、

「スーパーの蜜柑色して宵の月」

と小さく呟いてみた。つたない。けれどもこころにあっている。嘘がない。「けり」なんかよりよっぽど詩情に溢れている。少し前に、テレビをつけたら、いきなり俳句の番組が飛び込んできて、ちょっとびっくり。「コンビニや」なんて添削しているのをみて、思わずめまい。気色悪い「や」の響き。どこまで日本語をなぶり者にしたら、彼らは気が済むのだろう。けれども、もちろん、やっちゃんに馬鹿にされるに違いないから、こんないけないことをしているのは内緒です。だから数分たったら、タイマーみたいに忘れちゃうに決まっている。

 言葉の落とし物。いろんな人のを集めたら、きっと宝石が混じっている気がする。それで本でも書いたら、売れるかもしれません。なんて、ちょっと商売っ気が顔を覗かせて、おかしいくらい。

 夕空が酸化し始めました。酸っぱい蜜柑はなんの色。もう窓を閉ざしましょう。寒くっていけません。戻るとやっちゃんからメールが入っていました。

ようやく部屋。もぼ丼さなか、、、

とひと言だけ。おまけに「まぼ」と「もぼ」を間違えている。野菜も食べろとメールを返しましょう。寂しいから、電話しちゃおうかな。すると急に恋人の一文字が浮かんできたので、また不安になってきた。犬が飼えないのがいけないのでしょうか。実家みたいに、手持ち無沙汰のからかい相手がいないのです。

「もぼ丼だって、馬鹿ね」

とサボテンに話しかけたら、もっぱら虚しい気分。私は最近ちっとも冴えてない。

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