アーサー王の物語、覚書

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番外編「気になること」(07/06/10)

 さて、アーサー王第1部では恋するユーサーの活躍と共に、ティンタージェル王ゴーロイスの活躍が目に付きましたが、これはうっかりそうなってしまった訳ではありません。実は元のストーリーを読むとどうしても、私にはアーサーの真の父はゴーロイスだったのではないかと、疑いたくなってしまうために、まあゴーロイスに一種の愛着が湧いてしまったからでもあるのです。

 もちろんもっと素朴な理由として、ユーサーとイグレインは恋愛物語を中心に十二分に活躍するので、物語に別の太い線を設けるべく、ゴーロイスの活躍場面で全体のプロポーションを整えたというのが一番の理由ですが。以下にそう思いたくなる例をざっと箇条書きしてみます。

箇条書き

・まさにユーサーがゴーロイスの恰好をするということ自体

・ゴーロイスの亡くなった日に2人は結ばれるが、ゴーロイスの死とその後の2人の結婚はマーリンには予知出来たはずなので、変装させて抱きに行かせる必要は無かった。アーサーが即位してから後、マーリンはわざわざ臣下の前で「アーサーはゴーロイスの子ではない。私が変装させてティンタージェルに忍び込み、これによってユーサーとイグレインが結ばれ、その時にアーサーが宿ったのだ。」と(恐らく)詳細に説明をすることになってしまう。正式に結婚した後で、子を授かる方が遙かに理にかなっている。これによってアーサーには完全な王位継承権が与えられたはずである。ゴーロイスの亡くなった日とユーサーが思いを遂げた日が同じであることが、ユーサーの心の病への対処のためという説得力を大いに弱めている。いずれアーサーの血筋は、マーリンの苦しい説明では多くの騎士達が疑いを持ったはずだ。

・アーサーがユーサーの息子であるためには、イグレインとゴーロイスがしばらくベットを伴にしていない、ゴーロイスが亡くなった晩にのみ子供を設けるチャンスに恵まれたという条件が必要になる。もしこの確認が取れたとしても、当時の騎士達だってマーリンの妖術よりはイグレインが城内の配下の騎士などと寝たのではと考える可能性が高そうだ。したがってますますマーリンがあのような遣り方でユーサーの望みを叶えてやるのは、ひどくマーリンらしからぬ(どうだか?)浅はかな行為であると考えられる。

・アーサーは生まれるとすぐマーリンに預けられ、後にアーサーは自分が後継者たることを知らないありさまなである。自分の父親とは一度も顔を合わせなかったらしい。母親とも即位後初めて会っている。そのまま王宮で育てば後継者としては認知されたはずなのに。しかもマーリン自身が妖術でも教えながら育てるなら分かるが、アーサーを王に付けたいのなら、なぜ生まれてすぐ王宮を離れさせエクターに養育を任せたのか分からない。これはよほど両親との接触が好ましくない事態を生むための回避策ではないかと思えてくる。

・後にアーサーが剣を抜いて、マーリンが血筋を説明しても、彼を後継者と認めない者達が沢山いたのは、ユーサーとアーサーの容姿が似ていなかった、まるで違っていたという単純な理由もあるのかもしれない。

・さらにウルフィアスが後になって母親イグレインに対して「なぜアーサーのことを国内に知らしめなかったのか」と糾弾し、母が「すぐにマーリンに渡されてしまったのです」と反論している辺りも、詳しく考えてみると面白いかもしれない。


 以上。ざっと思いつきで書いただけでも、マーリンの行った行為は、ユーサーのために行われたものではなく、むしろユーサーに対してアーサーが実の息子であり、正統な後継者であると認知させるためにマーリンが仕組んだように思えてならないのです。

 つまり、アーサーはイグレインとゴーロイスの息子であり、それを正当の王位継承者として認知させるためにあのような芝居が打たれたように思えてくる。ユーサーが亡くなる前にも、マーリンはアーサーこそが正統な後継者であることをユーサーの口から言わせていますが、あの臣下の前での宣言こそ、マーリンが最も欲しかったものだったのかもしれません。

 もっとも、これは丁寧に必要箇所すべてを抜き出して考察したわけではないので、半分は感想みたいなものですが、どうも当初から引っかかっているので、ここで第1部のまとめとして番外編を設けてみました。

 ただし私の書いた物語では、アーサーはユーサーの息子だと思われます。ユーサーは、いくさの活躍は書かれていないが、別の方面での活躍というか、なんというか、まあ、なかなか面白い奴じゃないか。

随時

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