ベートーヴェン、交響曲第3番、第3楽章

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第3楽章

Scherzoーちょっとぎついくらいのしゃれっ気、ユーモアを持って快活に、いやもうちょっと言って早急なくらいに(伊)スケルツォ
Allegro vivaceー快活なアレグロに加えて一層快活に(伊)アレグロ・ヴィヴァーチェ
Es dur、3/4拍子

スケルツォ(1-166)

スケルツォ主題A提示部分(1-28)

スケルツォ主題A提示(1-14)
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・主題は1-6小節までの序奏とオーボエによる主題A(7-14)からなるが、この関係は第1楽章の冒頭動機と第1主題から派生している。さらに序奏部分は(Es dur)の主和音の同音連続が刺繍和音としてのⅣの2転で修飾され(ⅠーⅣ2転)の連続となった4小節目までが、第1楽章第1主題の全音階的同音反復の意味を持ち、その後主題の登場に向かい(B dur)に移行する5,6小節がクロマティック的であり、第1楽章で動機Xが登場する部分の要素を持っている。こうして序奏で第1楽章を指向した後に、主題Aが導入されるが、この主題は(B dur)の構成音による下降音階そのものから導き出されている。楽章を越えて第3番全体を見た時、3楽章までのそれぞれの第1主題提示が、まず1楽章の全体を統一する大主調(Es dur)であるのに対して、2楽章が平行調の(C moll)、3楽章が属調の(B dur)で形成され、4楽章で(Es dur)に回帰する。そして面白いことに、旋律の指向性が第1楽章では同音反復的、第2楽章では短調ではあるが上行的、そして3楽章では下降的であり、4楽章で無指向的になる。
・更に気が付けば、第1楽章では第2主題も同音反復的であるし、第2楽章の第2主題も意識として前半部分に上行指向があり、中間部Cはまさに上行型であるし、スケルツォの中間部トリオであるこの楽章の中間部は楽曲上の効果から上行指向ではあるが、最終楽章も派生主題は基本的に指向性が弱く、大きな枠組みはぶれていないように思える。いったいどこまでが意識され、どこまでが偶然で、どこまでが自分の妄想なのか皆目見当も付かないが、想像を遙かに越えた創作がなされていることだけは間違いないようだ。

スケルツォ主題繰り返し(15-28)
・1-14小節までが、声部を拡大してもう一度繰り返され、主題Aの提示部分を終える。

スケルツォ主題A発展1(29-72)

・序奏の和音連打の形で転調を重ね、最終的に(F dur)に行き着くと、主題Aがフルートで提示され、その後主題Aの後半によるカノンによる対位法的な部分が新しい事象として現われると、序奏のリズムを借りた終止句にはいる。フルートの旋律が途切れると、次第に序奏の刺繍音的な逸脱のある同音反復に動きを落とし、やがてヴィオラだけの同音反復に入る。

スケルツォ主題A発展2(73-142)

・ヴィオラの単一同音から、単一同音反復のままベースの(B)音に音を移して、(Es dur)の属和音に転調、主題A提示と同様に序奏を経て主題Aが再現される。主題Aは声部の厚みを増しスパイス代わりの対旋律も付随し、発展しているが、主題Aが終わると直ちに序奏無しのフォルテッシモで主題Aがもう1度繰り返され、総奏でクライマックスが形成される。
・主題の後半を使用してそのままクライマックスが維持されると、115小節目から唐突に弦楽器ユニゾンが裏拍リズムで(Es dur)の和音構成音下行パッセージを奏でる。3拍子の裏拍である各2拍子目がスフォルツァンドで強調され、しかも2分音符で引き延ばされるため、拍子のリズムに対して楽曲のリズムが強引に変化するようなこの効果はベートーヴェンお得意の裏拍強調の格好の例になっている。これが2回繰り返されると、序奏の性質である本来和音と刺繍和音の繰り返しに移行し発展2を終える。

終止(143-166)

・ヴァイオリンの終止旋律はやはり和音構成音を元に序奏の刺繍と類似の意味を込めた上方解決倚音を付随させて生まれたものだが、これが始め上声のヴァイオリンで、続いて151小節から派ヴィオラとベースに引き継がれて提示され、スケルツォ提示部分を終える。

トリオT(167-260)

トリオ主題T提示部分(167-197)Es dur

<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・ホルンだけで(Es dur)の和音構成音を上行して開始するトリオ部分では、ホルン5度として知られる平達5度が分かりやすく提示されているので、使い方を覚えておくと便利です。フレーズの切れ目で他の楽器が合いの手を入れるだけのホルンによるトリオ主題(167-182)が2回繰り返されて、トリオ主題提示を終える。

トリオ中間部分U(198-224)

・(As dur)に入ると、トリオ主題Tに応答するように、今度はホルンが休み木管楽器群が気持ち下行指向の水平位置を保ったようなトリオ中間主題を奏でる。中間部に入る198小節では、トリオが3拍子2個ペアになって6/4拍子のように聞こえていたのに対して、いきなり3拍子に戻り一瞬拍が裏返ったような効果を出している。木管が鳴り止み(Es dur)に移行して、弦楽器が中間部主題から取られた動機を奏でながら推移すると、再びトリオTが再現される。

トリオ主題T再現部(225-259)

・トリオTが1回再現され、そのまま推移するとリピートでトリオ中間部に戻る。

トリオ中間部分再現

トリオ主題T再現部再現

・うん、要するに[T-U-T'-(リピートで)-U-T']な訳だね。主題提示で見ると、最初のTが主題2つ分を含んでいて、T'が1つ分だね。

スケルツォ再現部(255-422)

・提示部分のスケルツォ主題A提示部、スケルツォ主題A発展1、スケルツォ主題A発展2、終止(143-166)までが同一再現される。唯一、スケルツォ主題A発展2で、唐突に弦楽器のユニゾンが裏拍リズムで(Es dur)の和音構成音下行パッセージを行う2回目の提示で、(Alla breve、2分の2拍子で)の指示と共に下行パッセージが2/2拍子の強拍リズムでフォルテッシモの記号で奏される部分だけが提示部分と異なるが、この部分は非常に効果的である。

コーダC(423-442)

・属和音の保続から主和音と属和音の連続交替に入ってフォルテッシモで曲を閉じる。
・というわけで、全体を改めて見渡すと
   S-S1-S2-[T-U-T'-(リピートで)-U-T']-S-S1-S2-C
と言うわけですね。



2004/9/26

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