ベートーヴェン 交響曲第5番 第4楽章

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・おめでとうトロンボーン、ここに来てシンフォニー初デビューを飾る。

提示部(1-85)

第1主題部分(1-25)

①第1主題A(1-4)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
②第1主題前半に基づく部分(4-12)
・4小節後半からは、まず初めの和音構成音を元に上行音階にしたものを、付点リズム補強をして一度(C-D-E)と一小節ごとにあがり、続いて8分音符の推進力を借り4つの音ごとに1度下降しながら(4つの音階順次上行が3回で)一気に、オクターヴ上の(C)まで駆け上がる。この4音順次上行は最終楽章において重要な役割を果たすため、これをXとする。もう一度これを繰り返した後、繰り返しによる推進力の助けを借りて音階は3回目に10度駆け上がりオクターヴ上の(E)にまで到達する。

③第1主題後半に基づく部分1(13-17)
・その後は第1主題Aの後半が8分音符+8分休符でリズミカルに奏されながら順次下降していたのに基づいているが、②の音階上行の前半部分で付点が加えられているのに対応し、付点によるリズム補強がなされ、さらに上声は音階からの6度開離音を混ぜ込んでいる。

④第1主題後半に基づく部分2(18-25)
・さらに3連符と16分音符によるリズム変化が付けられた第1主題後半に基づく部分が奏されたのち、Xを反転させたユニゾンによる4音順次下降が開始され繰り返されるが、ついには4音を超えて1オクターヴの下降に達する。これによって第1主題の提示部分が完全に終了して、次の副主題の提示が心理的に期待される。

 

副主題1部分(26-44)ようするに推移部分

・第1主題同様主和音の構成音から派生して主調(ハ長調)を讃えるべく生み出された副主題1は、第1主題冒頭(C-E-G)の和音基本形に対して、第2展開形を元に(C-G-E)によって開始される。副主題2小節+バスの分散和音的パッセージ2小節で4小節のまとまった部分が2回繰り返されると、次には副主題の2小節だけが展開されながら(G dur)に転調、やがてドッペルドミナントとドミナント和音を繰り返し、属7の和音が現れると、直ちに第2主題が提示される。

第2主題部分(45-63)

第2主題(45-48)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・第1主題部分から生まれた4音順次上行Xをもとに、第1楽章の冒頭動機のリズムだけを取り入れ3連符で印象付けられた第2主題。後半フレーズは、4音順次上行を4音順次下降に置き換えた素材を元に主題前半に対する応答を提示、第2主題全体のバランスを取っている。
・第2主題がもう一度繰り返されると、その後半部分が引き延ばされ推移的部分に入り、音階パッセージが初め一気に上り、上でとどまって降りてくると(G dur)の属和音で半終止する。

副主題2部分(64-85)要するに終止部分

副主題2(64-65)の提示(64-71)
・クラリネットとバスーンが室内楽的声部書法で、第2主題後半の4音順次下降から導き出した印象的な副主題2を3回繰り返して、室内楽的フレーズの終止カデンツに至る。
・その副主題2の提示をオーケストラ総奏で繰り返すが、3回目の途中で(C dur)の準固有4度の和音に入ると、和音の打ち鳴らしと分散和音演奏に変化。そのまま属7の和音に到達する。

展開部(85-206)

①推移の続き(85-89)

・バスが分散和音を演奏しながら(A dur)の属7の和音に転調しそのまま展開部に入っていく。

②第2主題に基づく展開(90-121)

・(A dur)の主和音で第2主題が完全な形で提示されると、その第2主題の後半下降4音に基づく部分が(a moll)に転調し繰り返される。その後は第2主題の特徴的な4音音型に基づく展開が次々に転調しながら行われていく。

③4音上行形と冒頭動機AAAのリズムの反復進行(122-131)

・最終楽章で初めてはっきりした形で第1楽章冒頭動機AAAのリズムが同音連打で、管の内声とティンパニに現れ、上声の4音上行と掛け合いながら、反復進行による転調が幾分重い足取りで特徴的に提示される。最終楽章ではおそらく一番冒頭動機AAAの悲劇的な力が押し戻そうとする力が強い危機的な部分。しかし、最終楽章がここまで勝利を讃えて来た経過からも、悲劇性の侵入は失敗に終わり、冒頭動機AAAの重々しいリズムはやがて(C dur)のドッペルドミナント上でただの同音連打に解消されると、展開の旅を終え再現に向かうために保続5音に到達する。

④保続音上の推移(132-152)

・保続5音上で3連符による同音連打も解消され、8分音符の同音連打が開始すると、3連符の使用は回音的な旋律の方に移り、冒頭動機AAAの重いリズムから完全に離脱、軽快なパッセージに形を変える。やがて改めて(C dur)の属3和音が確定され、本来ならクレッシェンドをして再現部に入る所だが、属3和音に止まったままいつまでも同一分散和音を奏している内に、和音の力が次第に損なわれ始め、同時に弦のパートが下の方に落ちていく。もはや本来の再現部の提示はおぼつかない。

⑤スケルツォのB主題による回想(153-206)

・力を失った属和音が遂に途切れると、3/4拍子で単一の(G)音が静かになり始め、やがてスケルツォの主題Bが回顧される。もちろんこのB主題を通じて回想されるのは3楽章だけではなく、なによりも冒頭動機AAAの提示される1楽章であり、同時に1楽章から3楽章に至る一連のドラマなのである。この回想は悲劇を超えてついに勝利に到達した、最終楽章のアイデンティティを確認強化する作劇法的なアプローチとして、この部分に取り入れられている。そしてその効果は抜群である。もしかしたら、回想ではない現場の悲劇性の現れは展開部の③の部分が一番危機感があったのかもしれない。同時に先ほどのAAAのリズムの侵入は、この部分が唐突にならない先取の効果も持っている。回想の最後の2小節では、上声で属7の和音が奏される中、バスだけが一足先に1の和音を奏でてスケルツォからの離脱と、次の開けっぴろげのハ長調の橋渡しをしている。

再現部(207-294)

提示部に対して、調性以外に大きな変化はないが、オーケストレーションがさらに厚みを増している。

第1主題部分(207-231)

副主題1部分(232-253)
・(G dur)に転調しない替わりに、しばらくのあいだ4度調(F dur)を徘徊してマイナーチェンジをほどこしている。

第2主題部分(254-272)
・(C dur)で提示。

副主題2部分(273-294)
・(C dur)のまま提示。

終止部(295-444)

第2主題後半に基づいて始まる推移(295-317)

・再現部が終了した後に、第2主題後半部に基づく推移部が来て、聞いている方はいよいよ終止部分に入ったことを確認。長い第2主題後半に基づく推移を過ぎてⅣの和音が4小節引き延ばされ、ようやく属3和音に行き着く頃には曲の終わりが近いことをさえ予感する。しかし、最終楽章で勝利に辿り着いたものの、それを再確認して確信に変えるために、更に長い(C dur)賛歌が必要だとベートーヴェンは考えた。

副主題1に基づく推移(318-361)

・半終止の後、不意に弦とファゴットで副主題1が奏されると、副主題1が完全に伴奏的な他声部に支えられ、軽やかに何度も何度も現れる。次第に和音だけが奏される部分に入っていくと、速度が速まって、ほとんど和音だけで徹底的に(C dur)を確定させるPresto.部分になだれ込む。

Presto.部分(362-344)

・和音連続の中で、こんどは副主題2を何度も提示しながらクレッシェンドして。(362-389)
・Presto.の中で第1主題が一度提示されると、驚くべき主和音賛美が曲の最後を讃え、絶対的な勝利を噛みしめながら曲が大円団を迎える。(390-344)

2004/4/29
2004/6/19改訂(というより放置)

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