ベートーヴェン 交響曲第8番 第2楽章

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第2楽章

Allegretto scherzando
B dur、2/4

概説

・7番も第2楽章がAllegrettoだが、この8番も緩徐楽章を持たずに軽やかな舞曲風楽曲が置かれている。
・主要主題Aの中にあるスタッカートの32分音符2つ分とその後に続く16分音符とのペア(タタタン)によるリズム的動機X(E-G-F)と、付点8分音符と16分音符の(タァーータ)(・・・。)の動機Y(F-D)が細かい16分音符の同音反復リズムの伴奏形Zに乗せて、軽やかなユーモアを持って提示される楽曲。細かいことは気にせず、諸井三郎氏の言うように展開部を欠いたソナタ形式としておこう。ちなみに、この主要主題は1812年にベートーヴェンがメトロノームの発明者メルツェルに与えた4声部のカノン旋律と同じであると、諸井氏の解説に載っていたが、この逸話は再度調査しないと危ういたぐいのものだ。

主要主題A提示部分(1-19)

主要主題部分(1-10)B dur

<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・管楽器によって16分音符の同音反復リズムによる主要伴奏形Zがいきなり(B dur)のⅠの2転で開始され、この伴奏型が第2楽章全体を規定する。その伴奏に支えられて、2転の幾分落ち着かない途中から開始したような効果を持ってヴァイオリンの主旋律が奏される。先ほど述べたように、この部分の2つの動機をX,Yとしておこう。ヴァイオリンが比較的短いテーマを奏でると、ベースが動機Xによってテーマに答えて主要主題A提示(1-4)を終えるのだが、この短い応答を使用して(g moll)に転調する。
・主要主題が(g moll)で、ついでに動機Yの付点部分が下行から上行に変化して提示される。ヴァイオリンとベースの掛け合いが繰り返されると(B dur)に回帰し、主要主題部分の終止のフレーズ締め括りが動機Xと、リズム変化した動機Yによって形成され(9-10)、主要主題部分提示を終える。この最後の部分では一瞬伴奏型Zが止まり管弦総奏で同じ旋律型が[ff]で提示される部分が単純ではあるが、非常に効果的だ。その直ぐ後に伴奏型Zが復活して、言ってみれば歌舞伎の止めのような効果を出している。

副次主題Bへの推移(11-19)B dur

・再び伴奏動機Zが管楽器で奏され続ける中、今度は動機Xによって副次主題Bへの推移が形成される。動機Xの掛け合いが、始めヴァイオリンとベースでなされ、途中から内声にも現われ密度を高めると、再び伴奏動機Zの続く部分から止めの部分に入り、14小節目で(Ⅳ-Ⅰ)の繰り返しと共に動機Xが強調提示され、それに応答して(Ⅴ7-Ⅰ)の木管動機X付き弦が同じように答える。(Ⅳ-Ⅰ)がもう一度繰り返された後、伴奏動機Zが回帰し、弦楽器で下声部から順番に動機Xが4回現われ1小節を形作り、これがもう一度繰り返されると(F dur)に転調し副次主題Bに到達する。

副次主題B部分(20-29)F dur

・伴奏動機Zによる管伴奏のまま弦楽器で動機Yに基づく副次主題B(20-24)が奏されるが、まず動機Yが下行しながら2回提示され、その後16分音符の分散和音パッセージが続く前半(20-21)に対して、後半部分(22-23)では動機Yの弱拍部にスフォルツァンドで音を加え最後の音をトリルで修飾した変形によって前半部分が修飾されて繰り返され副次主題Bの4小節を形成する。この間ベースは前から続く動機Xを対旋律として演奏し続け、ここで動機Xと動機Yの絡み合いが生まれている。
・しかしこの主題提示の後、いきなり早い弦楽器のフォルテッシモの刻みによって楽曲が切断され、とうとう伴奏形Zは、完全に途絶えてしまう。この楽曲では擬似的にソナタ形式的でありながら展開部は無いし、代りの短い推移すら存在しないが、この提示部副主題の途中からの伴奏動機Zの無い長い部分が、伴奏動機Zの再来を期待することによって再現部への推移を兼ねているように思われる。さて、副次主題2小節目の16分音符の分散和音パッセージが元になっている部分が、その後新たに開始されるが、ここでは旋律はバラバラにされ、中世のホケットのように各楽器が2音出しては他の楽器が引き継いでいく点画のような楽句が作られている。これがもう一度早い弦楽器の刻みによる楽曲切断をされて、今度は4小節に拡大されて点画がもう一度提示される。

提示部分終止(30-40)F dur

・管楽器がこの楽章で一番旋律的(リズム的スタッカート的な主題A,Bに対して)な終止旋律を開始すると、それに答えて弦楽器が応答旋律を奏で終止部分を開始。レガート的な部分を印象づけるためもあり、この部分で動機Xと動機Yは一旦舞台を降り、この掛け合いが何回か続いた後、再度動機Xが登場し、動機Xと管楽器の順次下降2音が掛け合いをする部分に到達する。やがてもう一度動機Xが途切れると、この管楽器の下行2音が連続化して、クラリネットとファゴットが5度下行の繰り返しを演奏するが、この5音下行を2音ずつのペアでまとめて演奏して、同じ音型の中での強調点が絶えず移り代り、さらに拍のリズムとも1音分ずれているために、拍子が揺らぐような効果が生まれている。この終止最後のフレーズが終止を讃えると、再度伴奏形Zが登場して主題再現に向かう。

主要主題A再現(41-49)B dur

・再度主要主題がヴァイオリンの旋律とベースの応答で開始されると提示部とは異なり転調はせず、2回目の繰り返しでは動機X(タタタン)が32分音符の連続(タタタタ)に変奏され、2音ごとにスラーが付き第1音目を強調する。この(タタタタ)動機はすでに主要主題Aの付点動機Yの直後に使用されていたものだが、この連続の刻みによって、主題が一層華麗な印象を与えている。このヴァイオリンによる主題変奏が49小節まで続き、直ぐに副次主題Bの再現に移る。提示部で属調の(F dur)に転調した副次主題部分は、再現部ではソナタ形式のように主調のままだ。

副次主題B再現(50-61)B dur

・やはり管楽器伴奏動機Zのまま弦楽器が動機Yで始まる副次主題B(50-51)を奏でると、今度は伴奏動機Zはホルンだけになって、クラリネットとファゴットが、1小節遅れてフルート、オーボエと弦楽器が副次主題Bをカノン風に提示するという提示部とは異なる新たな展開を見せる。さらに対旋律としての動機Xは副次主題Bの開始部分では使用されず、代わりにこの管楽器の部分で加わって、後から動機Xと動機Yの絡み合いを形成する。各楽器とも主題Bが終わると直ちに主題Bをトリル変奏した形でもう一度提示して盛り上がるが、いきなりフォルテッシモの早い弦楽器の刻みで楽曲が切断され、点画が行われ、もう一度繰り返され再現部終止に到達する。

再現部終止(62-)

・72小節まではほぼ提示部での終止と同じ動きをするが、72小節の後半で、かつて主要主題Aで主旋律の応答としてベースで使用された音階上行形が開始され、木管が同じ音型を追いかけると、やがて早い同音反復と動機Xの掛け合いに到達して、クライマックスを形成。最後は急激に音符を細分化させて華やかさをまし、最後の2小節でピアニッシモからクレシェンドしてフォルテッシモに達して曲を終わる。

2004/10/7
2004/10/16改訂

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