交響曲第39番変ホ長調(K543)

モーツァルト、交響曲第39番変ホ長調(K543)

概説
 C・P・E・バッハがお亡くなりた年である1788年の6月に、譜面化された最後の3大傑作シンフォーニーの筆頭がこの曲である。恐らく完成後、モーツァルトの活動拠点であるヴィーン、さらに90年のドイツ旅行で演奏された可能性もあるはずだが、明確な資料が無いために、名言は出来ない。
 そのため、聴衆ではない、モーツァルトが己の魂に訴えた霊感交響曲だという都市伝説が19世紀に広がり、これは今日でもぬぐい切れていないのである。そんな訳で、この39番にも「白鳥の歌」という俗称まで付いているが、モーツァルトのあずかり知らぬ名称である。
 あるいは、オーボエの代わりに使用したクラリネットの効果や、変ホ長調の醸し出す雰囲気が、寂しさ湛えた優しさのように聞える点から来ているのかも知れない。だからといって、「白鳥だ、これが白鳥に見えないのか」と叫びまくるのは控え、リスナーそれぞれの感想に任せたい。(なんのこちゃ。)
 また学者のランドンは、モーツァルトがわずか4、5日で完成させたと考えているそうで、序奏を外すと非常にコンパクトで、提示部をそのまま再現してコーダも無い再現部と持った第1楽章や、非常に短い簡潔(かんけつ)書法のメヌエット、やはり提示部を踏襲してコーダ無しに終わる終楽章は、あるいはモーツァルトが必用に迫られて、全速力で作曲したために、このようなシンフォニーに至った可能性を示唆しているのかもしれない。(もちろん私には、知る由もないのだが)
 曲は序奏付きで始まり、3拍子のアレグロソナータを1楽章に持ち、快活でウェットにとんだ4楽章まで社交性を失わない、最後の3曲の中ではよい意味で、最も娯楽性の高い仕上がりになっている。
 関係ないが全音楽譜出版のミニスコアの解説は妄想の極みであるから、お茶をこぼさないように注意。(2006年時点販売のもの)
初演
……どこかで初演された可能性があるが、証拠が無いので何とも云えない。
楽器編成
……弦5部、フルート1、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニー1対
……オーボエが無しで、代わりにクラリネットが使用される。

演奏時間
[ロジャー・ノリントン指揮
ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(1990)]
  第1楽章-9:40
  第2楽章-6:43
  第3楽章-4:17
  第4楽章-8:09
……第1楽章のアダージョが、2/2解釈でかなり早い演奏。のらりくらりアダージョよりも本質を突いていると思う今日この頃。

各楽章の楽曲解析

第1楽章
ソナタ・アレグロ形式
Es dur,2/2(旧は4/4だった)→3/4拍子
Adagio→Allegro
第2楽章
緩徐楽章
As dur,2/4拍子
Andante con moto
第3楽章
Menuetto
Es dur,3/4拍子
Allegretto
第4楽章
ソナタ・アレグロ形式
Es dur,2/4拍子
Allegro

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