シューベルト、交響曲「未完成」

シューベルト、交響曲第7番 ロ短調(D759) 「未完成交響曲」

概説
 簡単に説明すると、1865年にシューベルトの友人だったアンセルム・ヒュッテンブレンナーの蔵書の中からこの自筆楽譜が発見されたが、これは第3楽章の9小節目の後ろ側で、切り取られて無くなっていた。スコアの冒頭には1822年10月30日の記述があり、スケッチをスコア化し始めた日付ではないかとされている。
 このまったく忘却され、ほとんど資料にも顔を出さないシンフォニーは、晩年を迎えていたアンセルム自身が持ちだしたものではなく、アンセルムの弟で、シューベルトの秘書を務めつつ共に暮らしたこともあるヨーゼフ・ヒュッテンブレンナーが、兄元にシューベルトの交響曲スコアがあることを思い出して、「一流にはなれなかった作曲家」である兄、アンセルムの作品を上演にこぎ着けるために、ヨハン・ヘルベックに話を持ちかけたという経緯がある。シューベルト未完作品の発見に気をよくして、その年の内に初演を行なったところ、大ブレークして今日に至ってしまったわけだ。
 その後、「何故こんな交響曲をお持ちなのです」という、ジャーナリズムの声に対して、ヒュッテンブレンナーは
「シュタイエルマルク音楽協会の名誉会員としてシューベルトが選ばれたとき、交響曲作曲の提出が約束されて、取りあえず2楽章まで出来たところでアンセルムの元に手渡されたまま、残りがこなかったので、すっかり忘れてしまったのさ。」
と説明したが、何故これほどの作品が2楽章止まりなのかというミステリーに始まり、シューベルトの大量の手紙の中にも言及が見あたらないことや、アンセルムがシューベルトの死後すぐにこれを発表しなかったのは何故だとか、その後で、伝記を書くために質問された時にも、この曲について述べていないじゃないかなどと、様々な憶測が「未完成伝説」を誇大妄想化させ、ついには白黒映画の迷作・・・じゃなかった、名作「未完成交響楽」において、エステルハージー伯爵家の令嬢カロリーネとの恋に破れた刹那に作曲が中断し、
「わが恋の終わざるが如く、この曲もまた終わざるべし」
と字幕が流れて涙を誘う?、映画的妄想の離れ業に辿り着いた。
 ところがその後、20世紀半ばになってから、ヴィーンで、切り取られた後ろ側にあたる第3楽章の2ページ目(10-20小節まで書き込み、残りは空白)が発見され、つまりは総譜化を続けるために、シューベルトが続きを手元に残したものが、途中で中断されてしまったのか、それともここで終わりと切り取ったのか(あまり考えられることではない)、なんでアンセルムが持っているのか、本当に音楽協会と関係があるのかなど、ようするに、今日に至ってもさっぱりもって分かっていないのである。
 また、1823年入院に至った「切ない男性の病」と関係があるとも考えられるが、それはシューベルトの生涯の方に記しておこう。
初演
……そんな訳で、1865年にアンセルムの作品と共に、初演される運びとなったそうだ。アンセルムは大いに「未完成」に救われたことになる。
楽器編成
……フルート2,オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2,トロンボーン3、ティンパニ1対,弦5部
……三本使用のトロンボーンの効果は見逃せない?

各楽章の楽曲解析

第1楽章
ソナタ・アレグロ形式
h moll,3/4拍子
Allegro moderato
第2楽章
緩徐楽章
E dur,3/8拍子
Andante con moto

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