シューマン 交響曲第3番 第3楽章

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主要主題提示部(1-17)

主要主題(1-5)As dur

<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・ヴィオラを中心に置いた弦楽器の伴奏に乗せて、クラリネットとファゴットが主題旋律を開始。4小節から対旋律として開始するヴァイオリンが細かいパッセージを印象的に加えて管楽器による主題を閉じる。

応答的フレーズによる推移(6-17)As dur

・16分音符による同音連打と半音階上行の独特な響きを合図に、主題に応答する推移フレーズが開始。この合図にはホルンが合いの手を入れて印象を深めている。このリズム動機はまあ命名しないでおくが、楽曲全体で重要な役割を担っている。この部分は初めの1小節(5最後-6小節目)に基づいて派生している。途中9小節目に現われる階段上行形のじぐざぐ音型は2楽章にも見られたし、続く4,5楽章でも使用されるだろう。この部分は主要主題の最後に登場したヴァイオリンの対旋律が、そのまま推移フレーズに移行する方針が取られている。すなわち始めヴァイオリンで旋律を開始して、途中からヴァイオリンとフルートによって推移旋律を全うするわけだ。推移の最後には主要主題冒頭のフレーズが顔を覗かせ、これを持って主要主題側からの離脱を行なっている。

副主題による中間部(18-35)

副主題提示(18-21)→B dur→Es dur

・音階が順次進行する副主題は、緩やかな波のグラフのように[下行→上行→下行→上行]の曲線を描いて作曲されている。ファゴットとヴィオラで登場する低めの音域の旋律は、それ以上高い音が無いために非常に印象的だ。

前の推移フレーズによる推移(22-30)→g moll→Es dur

・再び主要主題の推移で見られた導入リズムが開始して、推移を繰り広げる時、その主要旋律は律儀にフルートとヴァイオリンが受け持って、前の推移に対して響きの統一を図っている。後半最後の部分では28小節の終わりから、副主題の冒頭が予告され、副主題再現に備える。非常にデリケートな仕上げ方だ。

副主題再現(31-35)Es dur

・今度は管楽器が充実して、フルート、クラリネット、ファゴットと弦楽器のヴィオラを中心にして副主題が再現され、副主題提示から中間的な推移を経て総奏的副主題再現が行なわれた印象だ。これにより、18小節からは中間部のようになっているが、同時に冒頭から考えると、開始主題に対して[推移→副主題]のパターンを2回繰り返して、副主題提示の強化を図ったようにも捉えられ、楽句部分の意味が多元化しているのは第1楽章と同様の方針だ。

主題再現部(36-54)

主要主題再現(36-44)As dur

・連続性と継続性についても第1楽章で詳しく見たが、ここでも初めの推移で登場した特徴的な16分音符の音型とその後の8分音符の動きが、今度は主要主題の伴奏として取り入れられ、その代わり開始部分の周期性を持ったヴィオラ伴奏を破棄することにより、形式的な秩序の中で開始した主要主題が、ここに来てより自由に、されども異なる部分との結合により情緒感を増して、成長を遂げた再現になっている事が分かる。スルメのような細かいニュアンスの味付けは、噛めば噛むほど味わい深い。(・・・。)
・さらに繊細なこだわりが、主題再現の後奏として主題離脱の推移を締めくくりのフレーズに変えて登場させ、主題再現を終えるが、主題再現自体に推移部が伴奏として組み込まれていたこともあり、主題再現全体が続く推移部分との見事な融和によって作曲されている事が分かるだろう。これお見事。

終結部分(44最後-54)

・つまり先の主要主題再現は、主要主題の最後に行き着いた到達点だったのだ。残されたのは短い取りまとめのシーズンである。弦楽器ベースがラソラソと繰り返す44小節半ばから保続主音に至ると、副主題冒頭が回想され、直ちに主要主題の断片が短く回想され(46小節)、副主題がリズムを失った音階下行パッセージでなだらかに下りながら、終止を呼び込む。49小節の最後から、印象的なクラリネットソロと伴奏によって、主要主題の回想を行ないつつクラリネットの極小カデンツ(51小節)を形成し、PPP(ピアニシシモ)による遠い日の面影、最後にピチカートとクラリネットの響き、そして沈黙・・・・。(最後はベルリオーズのパンフレットの真似でお贈りしました。)

2006/11/22
2006/12/01改訂

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