「和声 理論と実習」Ⅱ 覚書

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主旨

・東京芸術大学音楽学部和声の集団授業のために編纂された教科書。

第1章Ⅱの7和音

・第7音だけ下降限定進行
・基本は位置では5音を省き上3声に根音を含める配置も可能(例外的)
・この第7音はどんな時でも先行和音から保留されなければ、許してあげない。もともと前の音が引き延ばされて成立した和音だからである。(バスだけは跳躍上行も予備として認めてあげちゃう。)
・長調ではⅡ7和音2転における低音4度は予備が必需品。よってバスは先行音から同音A→Aであるか、跳躍上行でなければならない。

第2章準固有和音

・各調「音階各音度固有の音高位置」を、それぞれの音度の定位といい、定位にある音度を定位音度という。それに対して、定位音度を半音変化させることを変位という。上方変位と、下方変位がある。変位した音度を変位音度と言っておこう。

固有和音ーある調の定位音度だけで構成される和音
借用和音ーある調に対して他の調の固有和音が一時的に借用される場合、その和音のこと。構成音は定位音度に対して上方、下方に変位する。

準固有和音

・長調に置いて同主短調の固有和音を借用。
・注意、ただしⅠの同主短調借用はもはや転調と見なす。

半音階的関係

・定位が変位すれば半音進行が生まれるが、半音関係は常に同一声部で増1度関係で結ぶ。

・対斜ー半音階的関係がうっかり異なる声部に置かれることを指す。下の例以外は許さん!
  →後続和音が減7(短調根音省略9和音など)の場合
  →同音の一方の声部が増1度関係を結んで、他のもう一つの音が別の進行をする場合。(ようするに一方で増1度がなされていればよい。)

行きはよいよい帰りは怖い

・固有和音→準固有和音はいつでも行けるが、
・x準固有和音→固有和音は、後続固有和音がⅠ、Ⅴ系、Ⅰの2転の場合可能。

第3章ドッペルドミナントⅤⅴの諸和音

各音度調

・ある調の「Ⅰ以外の各音度3和音」(定位音度のみからなる)をそれぞれⅠとして持つ調を、その調に対して各音度調と呼ぶ。
→Ⅱ調、Ⅲ調など

ドッペルドミナント

・ある調において、そのⅤ調のⅤ諸和音を一時的に借用するばあい、Ⅴ度調のⅤ度「ドッペルドミナント」と呼ぶ。この和声書ではⅠ調に対してはサブドミナント(S)和音として扱う。

対斜の許容

①ドッペル諸和音→属7の3転、ドッペル1転の諸和音→属7根音、の場合のfis→fの対斜は許して差し上げよう。
②先行音→減7の和音(短調9根音省略形)でドッペルにはいる時は、対斜しても良いから、気にしないでどしどし使って最適な配置にしてくれろ。

平達9度の許容

・Ⅳの1転→ドッペル9根音でソプラノが2度順次下降の時だけ許す。

平達5度の許容

・先行音→9音高位のドッペル9の2転根音省略では、外声間平達5度が許されてしまう。

そしてさらに!

・短調の内声では、Ⅰ,Ⅳ→ドッペル諸和音におけるEb→F#の増2度進行までもが許されてしまったら、もう、もう使いたい放題戦うしかないではないか。まて、落ち着くんだ、その後更に2度上行してGに到達しなければならないのだ。

うんそれを言ったら

・長調でも、外声でE→F#の進行をしたら、責任を持って次の音をGに締め括っておいてくれた前。上ったと見せかけて、勢い悪くFに降りるような遣り方は、君、こっそり内声でやってくれたまえ。

ドッペル1転3和音の最適は

・DADだ!

ドッペルの低音4度、低音2度も

・予備が望ましい
・低音4度、2度は根音省略で回避できる

お待ちかねドッペル7の2転根音省略形

・第7音を2つ使うのが一般的だ。
  →上3声AF#A、F#CC(同音)、CC(同音)F#、CCF#など
・次の和音は基本位置属和音系でやってくれ、それが最多。

一方ドッペル9和音

・ドッペル9根音ありでは9音高位が最適。

下方変位が現われた

・当然下方変位第5音は下降限定進行音
・増6の和音とも呼ばれる2転がもっとも使用される
・重要なことは、変位音が第3音と減3音程に鳴っては駄目駄目ということである。
・先行音→減7の和音(短調9根音省略形)でドッペルにはいる時は、対斜しても良いと言う例は、下方変位でも認めてあげる。
・長調のドミナント9下方変位は短調借用を使うとよい。
・2転が低音4度に触れない(増音程)ため、ドッペル7の2転は跳躍して到達できる。これが一番使用する例。・・・3転の低音2度は予備してくれ。

第4章Ⅳ7・+Ⅳ7・-Ⅱの1転

①Ⅳ7

・Ⅳ7だって基本形は第5音省略形を使えるさ。
・Ⅳ7→Ⅰの2転は美的感覚が行けてない。
・長調での準固有Ⅳ7は第7音の予備が必要なので準固有Ⅵの後ろにしか出てこない。(半音階進行では予備にならない。)

②ドリアのⅣ

・短調において第3音上方変位のⅣを使用する時、+Ⅳになる。これこそドリアのⅣである。ただし7の和音では第7音は短調の固有音のままである。「ドリア」を食べる度に思い出して、一刻も早くこの響きを物にして欲しい。ちなみに、長調でこれを借用することはない。

・例外的進行
1.開離のCEbAF→DFHFでの第7音2度上行
2.ドリアのⅣ7→属9根音省略においては、上方変位している第3音を増1度下降させることが許される。
・+Ⅳ7の第7音は(属7の和音と同じく)予備が入らない

③ナポリのⅡ

・またまた短調において下方変位2の音度を根音とするⅡの3和音、つまりⅡの3和音の1音下方変位をナポリのⅡ(-Ⅱ)と言う。こいつは長調にも借用できるし、その用法は狙って使えば効果的。ほとんど1転形の上3声密集を使用するので、それを覚えてくれ。

第5章(TSDT)におけるS諸和音の総括(P81)

第6章(TST)におけるS諸和音の総括(P89)

付加6の和音

・3和音原型に根音から第6の音を付加して出来る和音。Ⅳ+6が重要。この時第6音は上行限定進行音である。Ⅱ7和音と同一の構成音だが、Ⅰに進行する機能の面からⅣ和音として扱う。
・ほとんど基本位置で用いられ基本Ⅰに進行する。

付加46の和音

・付加6に対して第5音が抜けて、替わりに根音から第4の音を加えると付加46の和音になる。長調でもほとんど短調からの借用が使用され、短調の第4音は上行形(H)を使用。この第4音は上行限定進行音になる。従って、実際は短調の属9の根音省略形と同じ構成音だが、Ⅰに進行する機能の面からⅣ和音として扱う。
・付加46が減7なのに目を付けて、先行音からの対斜は許可してしまう。

第7章近親転調

・和声進行中に調が変ることを転調という。
・先行調から離脱和音によって、後続調の転入和音に至る。
・本書においてはある調の各音度調を近親調とする。

方法

①半音関係の2音を増1度関係におく。
  →ただし転入和音が減7の場合対斜は許容。
②上部構成音に共通音が含まれれば保留。

例外進行など

・後続調の導音に到達する増2度上行は内声に限り許される。(総合和声では、増2度自体が許容なのでバスでも可能)
・離脱和音中の限定進行音は、正規進行できない場合、保留するか増1度進行させる。(例えば離脱属和音の導音が半音下がるのもOK。)
・しかし、導音は跳べる!何度も、何度も!(ただし上に向かって)
・転入和音のⅡ7などは当然予備が必要。

TSDT

・不完全カデンツで調が変れば、TSDの流れは初期化される。カデンツ原則は調が一定の場合だけ成り立つ。
・にもかかわらず、転入和音が、前の調の和音の続きとして捕らえられる場合は、TSD体系から外れてはならない。

第8章ソプラノ課題

・ソプラノが課題として与えられ、上3声ならぬ下3声を配置連結するのです。今すぐにです。
・ここで追加。バス、テノールの12度までの規則は、次ぎにすぐ12度以内に戻るなら、緩めて許可してあげよう。わーいわーい。

バスラインの一般注意

・6度進行は1音→6音の上行と、1音から3音への下降の時に使用したい。この6度進行は次の音で反対側に戻りがあるとよい。
・5度以上跳躍下降して第7音に入ったり、5度以上跳躍上行して導音に入ったりするのはみっともない。
・2回跳躍でジャンプしたら合計音程が7度、あるいは9度以上になるのはフライングやろう。ただし、フレーズで分かれている場合はしきり直しがあるからフライングにならない。
・一般に半終止の後の第1和音はⅥかⅠの1転がよい、基本形はいけてない。

2004/7/1

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