「第4章 構成音の転位(1)」 覚書

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「発音とリズムについて」

・ある音が発音される時間点を、その音の発音点という。
・発音点がリズムを形成するので、リズム点とも言う。
・各第1の音を前部と言い、残りを後部とすると、拍子が出来ちゃうが、更に音符を分割してもその中に前部後部関係が生まれる。

「構成音の転位」

・和音配置で、ある構成音が隣接音度(上方2度、下方2度)に移されることを、構成音の転位と言い、転位した構成音を転位音と言う。元の音は原位音と呼んでおこう。一般には「非和声音」「和声外音」と言われる。
→一つの構成音が取りうる定位転位の音高位置を位相というってさ。
・上方転位音には凸型お椀を記し、下方転位音は凹型お椀で表わす。
・さらに前部後部関係において、前部に転位音があれば前部転位音で、後部にあれば後部転位音である。
・転位音の後続定位音への一定の進行を、転位音の解決という。
    復元解決する復元転位音
    経過解決する経過転位音
    保留解決する保留転位音
    過復元解決する過復元転位音

→前部転位音は常に復元解決しなくちゃいかん。
→仮に原位音に戻してみる原位音判定なるものもある。(常に認識を持つこと事体は、重要である)
→次の定位音に行く前に、さらに別の転位音を挟んで解決を遅らせる事を延引という。
→また、場合によって次の和音の転位音に解決したと考えられるような例もある。還元した場合には正規の解決がなされていない事になる。

「ここで一般的な名称とその定義などを」

・刺繍音([仏]ブロドリー)、補助音
 →前部原位を持つ後部復元転位音
・経過音([英]passing note)
 →前部原位を持つ後部経過転位音
・倚音([伊]appoggiatura)
 →和音交替点または内分変換点において出現する出現する復元転位音
 →特に先行音が原位音と同じならば刺繍的倚音
 →原位と逆方向の隣接音ならば経過的倚音と
・繋留音([英]suspension)
 →和音交替点にある復元転位音が先行定位等高音から結合されて到達された場合。
・先取音(先行音)([英]anticipationアンティシペーション)  →保留転位音
・逸音([仏]エシャペ)
 →過復元転位音

「同種構成音と異種構成音」

・まずこれを定義
  同種構成音ー根音と根音など、同じ種類の構成音
  異種構成音ー第3音と第5音など、異なる種類の構成音

・そして更に、とある転位構成音に対して
  同種構成音の定位構成音(転位を戻した音)を、同種定位音
  異種構成音の定位構成音(転位を戻した音)を、異種定位音

・位相の異なる(それぞれ定位と転位の)同種構成音どうしの同時関係
①前部(和音交換点)であろうと、後部であろうと、復元転位音(倚音・掛留音・刺繍音)とその同種定位音が、(長・短)2度(単音程)の同時音程をなしてはならない。
 →駄目
   EGCD(短2度)からDがCに
   EGCCから最後のCが→D→C
②交換点・変換点の前部転位音(倚音・掛留音)の上方に、その同種定位音を置いてはならない。
 →解決を先に言われたようになってしまうから
   駄目ーEGDCでDがCに
      DGCEでDがCに
 →ただし、経過的倚音では、上方同種定位音が予備されていれば、許してやる。
   許容ーEGCCから次の和音DGECに、さらにバスの経過が後部    でDからCに
③一方、交換点・変換点の前部転位音(倚音・掛留音)の下に、同種定位音を置くことも、禁止はしないが、バス以外は奨励しない。反対にバスでは大歓迎だから、バスでやれ、バスで。
 →ただし、同種定位音が予備されていれば、気にならないので、全然OKさ。
   許容ーCCEGからECGDでDがCに
 →さらにⅠの1転で(E^G-C-A[→G])の形は、常に歓迎しちゃうよ?
   許容ーDFHAからEGCAでAがGに

・位相の異なる異種構成音同士の同時的関係
①経過転位音(経過音)とその異種定位音とが、短2度(単音程)の同時音程をしてはならない。
   駄目ーCCEGの後部でGがFに、さらにCGEE(同音)
②前部下方転位音とその異種定位音とが、短2度・長7度(どちらも複音程を含む)の同時音程をなしてはならない。
   駄目ーCCEF(EFは短2度でも短9度でも)からFがG
 →ただし異種定位音がタイで予備されている刺繍的倚音では構わない。
   許容ーCCEGで下3声がタイで、CCEFに至りFがGに戻る
③Ⅴ諸和音における定位第3音(導音)と下方転位第5音の同時関係はあまりよくない。
   避けたいーGHFDからDがCに下がってGDFH
        FHAbDからDがCさらにD
 →ただし先取音としての下方転位第5音は良い
   良ーDHFDからDがCでCCEC
④一般に、定位音程とその変位音程(#さんbさんなど)とが同時に出現しても、一方が転位音であれば、差し支えない
   良ーGDHFでGがF#さらにG
     EsGCGからDFHBでBがAs、さらにEsGCG
 →ただし、短調9和音における定位第9音と下方転位第3音の同時関係は、なるべく避けたい
   避けたいーDAsFHでHがAさらにH
   こうするーDAsFHでHがA#さらにH

「公理と転位」

①進行における音程制限
 →還元して良好なもの、さらに還元して不良なものでも転位の結果良好なもの共にOK
 →つまり転位音としてなら増4度上行して解決なども可能
②限定進行音
 →還元した場合限定進行が形成されていれば、じゃんじゃん転位してもへっちゃら。
③増1度進行
 →還元した上で適用、還元して消える対斜もすべて許される
④連続8度、連続1度
 →還元した場合だろうと、転位の結果だろうと絶対に許されない
⑤連続5度
 →還元後の連続5度は、転位の結果後続同時発音が回避されていればOK
 →一方転位の結果生じるものは、後続完全5度中に前部転位音すなわち倚音を含むものだけは許可、他は許されない
⑥平達8度、5度
 →還元した場合良好なら、転位音が平達していても見逃してあげちゃう
 →一方還元して不良となっていても、転位の結果回避されていれば問題なし
⑦解決進行に際しての平達8度
 →「和音交替点の転位音」の下行解決と、他声部による定位音の3度下行による平達8度は、いずれの声部にあっても、転位音の修飾で誤魔化されていようとも、必ず捕まえてお縄頂戴。

「孤立4度」

・2世部だけの同時発音による完全4度を孤立4度という。
・孤立4度を後続音程とする連続4度
 →後続4度中に転位音を含むものは許すが、後続が定位音で4度だったら逮捕しちゃうぞ?先行音程が増減音程でも見逃すわけにはいかないの。
・孤立4度への平達
 →孤立4度中に転位音を含む場合、孤立4度の発音点に置いて他の声部に転位音がいらっしゃる場合は許すが、それ以外は駄目。

「導音の例外進行」

・GFHD→バスがCに対してソプラノが前部転位音でDが残ると、Hが先に解決して不良になってしまう。などの障害を逆手にとって、導音が跳躍してしまう
 →ソプラノなら4度上行、6度上行
 →内声ではその他に3度下降も可能
 →ただしⅥに行く時は、導音2度下降の例だけが許される。

「主音上のⅤ」

・下に1と記入してあげるの。
・主音上のⅤは本来「転位音を含むⅠ」である
 →全終止で用いることが多い
 →Ⅴ諸和音から、1上のⅤ諸和音に移る時限定音の置き換えが可能。

「位相判定の手引き」を貴方だけに教えて差し上げます

①拍点外での和音交替は稀
②ある音が、次ぎに4度以上跳躍進行する場合には多くの場合定位音
③長2度上行して復元解決する下方倚音は少ないため、次ぎに長2度上行する音は定位音の可能性が高い。(ただし経過的、刺繍的な下方倚音や、導音に向かって上行解決する下方倚音は転位音だっちゃ)
④ある前部音が、先行する等高音と結合され、かつ、後部音に向かって2度下降する場合、ある前部音が転位音で、下降先が定位であることが多い。

「おまけ」

・開始和音、変終止和音では、ソプラノに関わりなく、3個の構成音による開離配分がゆとりを持ってなされることが多い。出だしでは、テノールの音がそのまま保留されるのが普通だし、効果的だ。

2004/10/7

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