雨降りの夏

雨降りの夏

 祭さえまゝならぬほど、雨と曇天の続きければ、「明けない夜は長い」などの格言、あるは心の憂さ。たまらなくして、だらしなく酒にへつらひ、不意にものしたる落書き。とりとめもなく十二句。つら/\つらねたるも、いつしか飽きるまでの、つかの間十数分ほどの、創作意欲には過ぎざるべし。

[1]
春待ちの匂い求めて月歩き

[2]
こばるとブルーカクテル水母かな

[3]
春を待つ寝覚めの夢よあと始末

[4]
鬼火揺れて舳(みよし)をいざなう冬の浪

[5]
おビールで紹介しましょか君の粋(すい)

[6]
川獺の煙(けむ)に巻かれて秋刀魚(さんま)かな

[7]
去る君を引き留めもせず秋支度

[8]
釈迦牟尼の涅槃に御座す甘茶かな

[9]
すきゝらいきらいすきしてクローバー

[10]
潮吹いて投げ出す岩よ蟹骸

[11]
焼酎に新緑の香の混じるかな

[12]
かゞり火も君との夏も帰宅路

 あるいは理想的なる狂句とはかかる程度にはあらんや。

   「狂句」
食欲の勝ればこそこの季節とか

 なれば川柳の意義はいかに。

   「川柳」
北と西とかくもジョーカーチラつかせ

など、安き底のみつかの間徘徊するこそおかしけれ。

なきわらい終えて立ち去る花火かな
        時乃旅人