マクベス、日本語訳名言集

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趣旨

 松岡和子さん訳のマクベス(ちくま文庫)からのシェイクスピアのマクベス、日本語版名言集です。まだ読んでない人は急いで本屋さんに走りましょう。一部勝手な改造がありますが、小さな言葉の遊びまで否定したら戯曲の世界は地盤沈下を免れないでしょう。(だから許してね、と言いたいらしい。)

第1幕第1場荒野

雷鳴と稲妻とどろく中で三人の魔女が登場
魔女1 :いつまた会おうか三人で。雷、稲妻、雨の中?
魔女2 :戦と嵐が収まって、勝利のやつが負けたとき。
魔女3 :すなわちそれは日暮れ前。
魔女1 :暗闇控えてどこで会おう。
魔女2 :それならいつものあの荒野。
魔女3 :会おう、会おう、会おうよマクベス。会ってみたいなマクベスに。
魔女1 :三人集まりゃ輪になって。
魔女2 :人の定めを駆け巡る。
魔女3 :覚えていらっしゃい魔女3人。これから起こる出来事を。
3人  :いいはひどい、ひどいはいい。(fair is foul,and foul is fair.)すぐに向かおう、彼の元。

第2場陣営

「握手も別れの挨拶もなしに敵将をただちに一突き。」

・別れ際に友人に傘を突き立てる悪戯をしたら、呆然として大丈夫かと云われた。

「おお、さすがは我が身内。」

・お茶を持ってきた妻に言ってみたら、三日間口を利いてくれなくなったとか、離婚させられたとか、様々な伝説を誇る名言。

第3場荒野

「運命操る三姉妹、海山千里を駆け巡る。」

・三姉妹の子供を持っていたら、ぜひ覚えさせよう。もちろん三兄弟でも構わない。早い話が3人衆でも構わない。古い言葉は大いに使おう。その代わり子供達に家中滅茶苦茶にされても文句は言えない。

「ひどい目にあったのかよかったのか、こんな一日は初めてだ。」

・いい事と悪い事が一遍にあるような不思議な日には、こんな言葉も言ってみたくなるもの。

「万歳マクベス、おめでとう~の領主。」

・使い方、友達の誕生日の時に使ってみよう。「ばんざい~、おめでとう~歳。」

「何と!悪魔に真実が語れるのか?」

「何一つない、あるのは空想だけだ。」

・ぼおっとしていると指摘された時に、有無を言わさず言ってみると、ますますおかしな人と思ってくれるさ。何か悩みでもあるのか、と聞かれた時にも使ってみたい。

「新たな名誉というやつはおろしたての服と同じでなかなか身につかない。着慣れるしかないな。」

・おおやけの場所で何か賞を貰ったり昇進が決まった時などにこんな言葉を言うのは、紙一重で許されるのではないだろうか。どうですひとつ。

第4場フォレス、宮殿の一室

「おお、頼もしい身内。」

・誰かが頼もしい事を言ったときに、不意に叫んでみよう。

「目は、手の仕業を見て見ぬふりをしていろ。その間にやってやる。やってしまえば目も恐ろしがって見ないだろう。」

・魚を下ろすときにぶつぶつと妻が呟いていたら、だんなは何か声をかけてくれるでしょうか?


第5場インヴァネス。マクベスの城の一室

「その明日に太陽を拝ませてたまるものですか。」

・天気予報で明日の天気を言った瞬間にTVに向かって叫んでみるとか、知人が「明日さあ」といった瞬間に怒ったように言ってみるとか、なかなか楽しい使い道が待っています。遠足を明日に控えた子供に言ってみるとか。(泣き出す子供が居たら将来に見込みありだ。)

第6場城の前

「甘くすがすがしい空気が心地よく五感をなぶる。」

・恋人と居る時にさわやかな風が吹いてきたら、独り言のようにこの言葉を言ってみよう。ただし後の責任は取りません。

「それを踏まえ、こうして面倒を掛ける事になった私に、神の祝福がありますように。」

・勝手に変えてしまいました。誰かに面倒をおかけするときに笑顔と共に言って下さい。


第7場城内の一室

「やってしまって、それでやったとけりがつくなら、さっさとやるに限る。」

・何かを順番にやる事になったら、決して後からなどという半端な事はしないで、この言葉と共に一番始めににやるのです。

「涙の雨は溜め息の嵐を飲み込むだろう。」

・泣いている友達にそっと一声。余計泣いたらごめんなさい。

「俺にはこのもくろみの脇腹を蹴る拍車はない。あるのは馬に飛び乗ろうとする野心だけ。」

・意気地なしと言われた時には、そっと呟いてみる。

「さっきお見えになっていた望みは酔っ払っていたのですか?あの後眠りこけたの?」

・酔っ払っているやつに意味も無く言ってみると、一人ぐらいはごめんなさいと謝ってくるかもしれない。

「『やってやる』の口の下から『とても無理だ』魚は食べたいが足は濡らしたくないという猫そっくり。」

・「やっぱりよそうかな」と言う言葉を聞いた時にはいつでも有効でしょう。

「勇気を締めなおしさえすればしくじるものですか。」

・ベルトを締めている時に毎回言おう。一日の始まりのおまじない。もちろん失敗を恐れている人を見かけたら、言ってあげなければなりません。

第2幕第1場インヴァネス、マクベスの城の中庭

「なんだ、これは。これは短剣か?目の前に見える、柄を俺の方に向けて。こい、掴んでやる――――掴めない、だが見える。」

・これを使うかたは要注意。気を付けなくっちゃあいけない。狂気に取り憑かれた気持ちを味わおう。重要な会議の席で突然やってみたら解雇されたという伝説を持つ名言。

第2場前に同じ

「夜よもう眠るな!グラームズは眠りを殺した。だからコーダーももう眠れない。マクベスはもう眠れない!」

・眠れない夜には布団の中で、こんな事を叫んでみれば、余計に眠れる事の無し。もし先生をしている方がいらっしゃったならば、寝ている生徒を揺り起こして叫んでしまおう。「Aよもうねむるな!先生は眠りを殺した。だからお前ももう眠れない。Aはもう眠れない!」

「やったことを思い出すぐらいなら、ぼんやり我を忘れている方がいい。」

・何か忘れ物をしたときに使う、あまりにもおやさしすぎる表現。誰かから、「この鎌倉で生きるにはあまりにもお優し過ぎるようでございますな」と言われてしまうかもしれません。

第3場前に同じ

「ああ、それにしても早まったことをした。怒りに駆られ、ついその二人を殺してしまった。」


第4場城の外

「闇夜が空を巡る明かりの首を締めてしまった。夜がのさばっているのか、昼が恥じて隠れたか。」

・もちろん月も出ていない闇の夜に唐突に隣の奴に投げる言葉だ。

「共食いまでしたそうです。」

・例えばそこに居ない別の二人について語っている時に、チャンスがあれば言ってみよう。さあ、勇気を出して言ってみよう。

第3幕第1場フォレス、宮殿の一室

暗殺者2:私は、陛下、世間から殴る蹴るの扱いを受け続け、はらわたが煮え繰り返っております。その世間への腹いせとあればどんな無謀なこともやってのけます。
暗殺者1:私もです、陛下、運命にこづきまわされ、災難続きで嫌気がさしております。こうなったら一か八か命を賭け、いい目を見るか、命を捨てるか。


第2場別の一室

「万物の間接がはずれ、天も地も滅びてしまえばいい。」

・嫌な事があった時のおまじない。気が晴れるまで言い続ければ、きっと気持ちも落ち着くさ。


第3場同じくフォレス、宮殿へ続く道のある狩猟園

バンクォー:今夜は雨かな。
暗殺者1:そうとも血の雨だ。
バンクォー:うっ、だまし討ちだ!

・友達と一緒に覚えておいて、雨が降りそうなときに言い合ってみよう。出来るだけ人の多い所で。「今夜も雨かな。」「そうとも、血の雨だあ。」


第4場宮殿の大広間

「主人役が、歓迎の気持ちを絶えず言葉にしなくては、宿屋の食事と同じ、せっかくのご馳走も味気ないものです。食事をするだけなら自分の家がいちばん。」

・お集まりの皆様にこのような言葉を言えたなら大したものです。

「幻め、俺を馬鹿にする気か、失せろ!――なんだ、――消えてしまった。これで元どおりの男だ。――どうか、席に着いてくれ。」

・‥‥機会があれば、着席の合図を送る前に言ってみて下さい。ええ、もちろんどうなっても責任は負いません。あしからず。

「血の川にここまで踏み込んだからには、たとえ渡りきれなくても戻るのもおっくうだ、先へ行くしかない。」

・挫けそうなときはこのおまじないを唱えましょう。あら不思議、なんとかまだやれそうな気がしてきたでしょう。もう一度唱えましょう。さあ、まだやれますね。


第5場荒野(ヘカテー登場)

第6場レノックスと貴族登場

貴族:だが剣もほろろに「お断りします」とやられました。
レノックス:何のことだ、剣もほろろとは。
貴族:はっ、人の頼みなど冷たくはねつけ、受け入れようとしないことです。
レノックス:‥‥‥。
貴族:い、いかがされました。
レノックス:悪気は無い、私が知らなかっただけのことだ。


第4幕第1場暗い洞窟

魔女3人:2倍だ2倍、苦労と苦悩、ごうごう燃えろ、ぐつぐつ煮えろ。

・何かあるたびに皆で大声で唱えてみよう。君もヘカテーに会えるかもしれない。

「月満ちて女から生まれた者は誰一人、マクベスを倒せはしない。」

「バーナムの森がダンシネインの丘に向かって攻め上って来ないかぎり、マクベスは決して敗れない。」

・この上の二つさえ覚えておけば君もマクベスを語る資格をもったことになるのです。


第2場

(ファイフ。マグダフ夫人、その息子、ロス登場。)

「お母様、こいつ、僕を殺しちゃうよ。」

・自分の母親に友人を紹介する時に、高めの声でこれが言えたなら大したものである。


第3場イングランド、国王の宮殿の一室。

私の中には様々な悪徳がすべて接ぎ木されている。それが一斉に花開けば、黒いマクベスも雪のように真っ白に見えるだろう。

・これこそが正しい比喩の使い方だ。

「明けない夜は長いからな。」

・「夜が長くなったねえ」などという言葉に対して、少しずらしたこんな言葉はいかが?‥‥と言うかかなり意味が通じてないけど。(恋人同士の夜をさす、恋人に言う言葉である、という説もある。)

第5幕第1場ダンシネイン、城内の一室

(さ迷える夫人)

第2場ダンシネインの近く

(マルカム軍に下る貴族たち)

第3場ダンシネイン、城内の一室

「俺の人生は赤くなりかけた枯れ葉となって、最後の風を待っている。それなのにもはや老いの伴侶も栄誉も、愛も友も何一つ持つ事は許されない。代わりにあるのは呪いだ!」

・離婚をした時にはこの言葉と共に飲み会で暴れてみよう。もちろん失恋の時でもいいですが、この重みには40歳以上の離婚こそふさわしい。

第4場ダンシネインの近く。森が見える。

(枝をかざし、進めマグダフ。)

第5場ダンシネイン、城内

「何も今、死ななくてもいいものを。そんな知らせには、もっとふさわしい時があっただろうに。」

・刑事ドラマに見入っている人がいたら、嫌がらせの為に人が死んだ所で言ってみよう。

「官長!バーナムの森が、森がやってきました。」

・こんな事は書いてなかったと思うのだが‥‥‥。

第6場ダンシネイン、城の前

(枝を捨て、いざ戦え。)

第7場ダンシネイン、戦場の他の場所

(小シーワード殺される。)

第8場戦場の別の場所

(マクベス殺される。)

第9場城内

「長い夜は終わった。」

・そんな事は言っていないはずだのに。

2003/春

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