・松岡和子訳ちくま文庫版ロミオとジュリエットの中から、自分に興味のある表現だけをピックアップした、覚え書きになってしまいました。
大公:邪(よこしま)な怒りの火を、己の血管からほとばしる鮮血で消そうというのか。
モンタギュー:降ったばかりの朝露に涙を添え、深い吐息で霧をさらに曇らせて。
モンタギュー:まるで悪い虫のついたつぼみ同然、かぐわしい花びらを風に拡げ、その美しさを太陽にささげる前に蝕(むしば)まれてしまう。
ロミオ:恋は、ため息の蒸気から生まれる煙、晴れれば恋人の眼に火がともり、かき乱せば恋人の涙が海とあふれる。
キャピュレット:地上の星の美女たちが集まり、暗い夜空を明るく照らす。
ベンヴォーリオ:苦痛は別の苦痛でやわらぐものだ。ぐるぐる回って目眩がしたら、逆に回ってみればいい。死ぬほどの悲しみも別の悲しみがあれば癒やされる。
キャピュレット夫人:この貴重な愛の書物はまだ製本ができていない。完璧な美しさに欠けているのは妻という表紙だけ。
ロミオ:いや、御免だね。君たちのダンス靴の底は軽いけど、僕の心の底は鉛のように重い。地面に繋がれて動くこともできない。
ベンヴォーリオ:君が吹きまくる風のせいで、ぼうっとしてしまった。
ティボルト:強いられた忍耐と勝手に湧いてくる怒りがせめぎ合い体が震えてくる。
ロミオ:大空で一番美しいふたつの星が何かの用でよそへ行き、戻るまで代わりに光っていてくれと、あの人の目に頼んでいる。
ロミオ:小首をかしげ頬を片手に預けている。あの手を包む手袋になりたい。そうすれば、あの頬に触れられる!
ロミオ:恋の軽い翼で塀は飛び越えた。石垣などでは恋を閉め出すことはできない。
ロミオ:恋人に会う時は、下校する生徒のように心がはずみ、恋人と別れる時は、登校する生徒のように心が沈む。
ロレンス:若者の恋心は胸ではなく眼に宿っているのだな。
乳母:二人きりなら秘密は漏れぬ、だから入れるな三人目
ロレンス:恋する者は、夏の風に戯れる蜘蛛の糸に乗っても落ちないという。この世の歓びはそれほど軽いのだ。
ロミオ:悲しい胸のため息が霧となって立ち上り、僕を追っ手の目から隠してくれるのでない限り。
ロミオ:ロミオという名前が狙いを定めた銃の筒先から発射され、ジュリエットを撃ち殺したのだ。
キャピュレット:ため息の風は涙まじりに、涙は風まじりに荒れ狂っている。
乳母:ロミオなんかあの方に比べたら雑巾ですよ。
ジュリエット:気も遠くなる冷たい不安が血管を流れ、命の熱を凍らしてしまいそう。
ロミオ:俺と共に悲運の名簿に名を記された男。
ロミオ:全てを買い占める死神との無期限の売買契約に!
ロミオ:波に揉まれ疲れたこの船を岩角に当てて砕いてくれ!愛するジュリエットのために。
大公:朝と共に陰鬱な安らぎが訪れる。太陽も悲しみ、顔を見せようとしない。
2007/2/4