遠くへ

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遠くへ

信じていなかった
大人になってしまう
そんな言葉はみんな
作り話だと思っていた
子供が終わるとか
少年が消えるとか
作られた言葉のあやだとと
ずっとそう思っていた

周りに影響されるなんて
馬鹿らしいことだった
追い付かなければなんて
下らない考えだった
そんな事は分かっていた
とてもよく分かっていた

だけど、人は考えではなく
心だったから

いつの間にかきっと
必死になって追い掛けていた
自分でも気付かないうちに
人々からはぐれないように
必死になって追いすがった
気が付いたらもう前の自分
どこか遠くに行ってしまった
いつの間にか自分のなか
どこか違ってしまっていた

それに気付いて、突然胸が冷たくなった
何かに締め付けられて、たまらなく苦しかった
慌てて戻ろうとしたけれど、もう
どこを見渡しても帰り道はなかった
昔の自分思い出そうとして
必死になって叫んでみたけれど
何の答えも返ってこなかった

まるで一人夕暮れの山道で
迷子になってしまったように
胸がとても冷たくなって
ただ怖かった

寂しくて
悲しかった

涙が一粒
静かにこぼれた

‥‥もう、
みんな忘れた。

作成時2001/09/17

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