一人言

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一人言

互いに夢中なのは自分の話
楽しそうに続く会話の中で
今、見詰めるものは何ですか
明日になったら何か残りますか

体裁に満ちあふれた文章
馬鹿馬鹿しい修飾と形容
何も語っていない汚らしい
言葉は醜いものだから
形なんてどうでも良い
少しでも真実に近い言葉
そのまま言えばいい
誰も認めてくれなくても
本当はこう言いたかったのだと

なぜ互いにろくに聞いていない話
楽しそうに話していられるのか
なぜ相手が耳を傾けてもいない話
少しもあなたの言葉の内容など
考えているわけでもないもの同士
幸せそうに話していられるのか
どうせ離れたらすぐに忘れて
お互いそんな話はすぐに忘れて
大して覚えてもいないくせに
あなたはなぜその人に向かって
幸せそうに話を続けるのか

互いが相手の思想なんてどうでもよく
どこにでもある安い言葉以上には
その人である必要などまるでなく
どんなたましいを抱えているか
ほとんど何も分からないまま
まるで互いが人形に向かって
声をかければ返事をくれる
最適化された人形に向かって
自分の悩みを打ち明けあっている
まるで鏡に向かっての独り言
欲しいのは表面の返事だけで
それに差し障りのない慰めか
あるいは対話集の中の言葉にある
下らない戒めでも付いていれば
初等日本語なみの同情があれば
機械でも真似するぐらいの
下らない言葉さえあれば
それだけで満足なのに

そんな事実を認知もしないで
猿芝居を会話だと言い張って
本当は相手の話などまるで
聞きたいとも思っていない
だってどうせ何も理解できず
ほんの2つか3つの断片を残して
何を覚えているのかといえば
ほんの一か月たった後でも
何を言ったか覚えていない
表層的でこころに触れ合わないから
残飯ぐらいしか残っていない
つまりは相手のことなど初めから
気にしていなかったのと同じこと
大切なのはどこまで行っても自分で
本当は相手が誰かなんてまるで
どうでもいいことに過ぎなくて
ただうまく自分に合う装置ならば
それで十分なだけの2人が向き合って
互いに自分の事を話しているだけ

それでも平気な顔をしてずうずうしく
うなずいてくれる仕掛けの付いた
物分りのよい人形の役を交互に演じて
相手の話をそんな風に首を振って
表層的な返事で慰めていれば
自分の番が来るまでもっともらしく
初等辞書の言葉で誤魔化していれば
自分の話も聞いてもらえるのだから
そんな風にして空っぽの会話
お互いが相手の顔を見詰めながら
独り言を言い合っているのに
自分の番が来るまではお預けをして
しっぽを振って決まった返事を
投げかけているだけなのに

恐くはないの
結局は一人で話している
なぜ気付かないの
相手の話など聞いていない
そうでないならばあなたは
その人の一体何を聞いて
何を知ったというのか
あなたは一体どこの誰と
誰と話をしているのか
その目の前に座っている人
あなたは本当に
ほんの少しでも
何か知っているのか

ねえ教えてください
あなたは本当に
その人と話をしているの

作成時2001/11/11
2007/3/19改訂難し

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