僕の教室

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僕の教室

高校の教室の風景は
色をなくしたもやの中
呆れるほど見た黒板も
下らない笑顔の毎日も
遠く遠く夢の中にあって
実感なくしたおとぎ話

机の上に手の平二つ
ぼんやり見詰めた面影も
身を焦がす青臭い悩みも
浮かんでは消えた夢達も
遠く遠くにかすんで揺れる
色を忘れた思い出のよう

曖昧な記憶にぼかされて
気持ちだけが抜け落ちて
もしも教室に帰れたなら
あの頃の前に立ち尽くして
話し掛けてもきっと2人
食い違っては風が吹く

時を隔てた2人のこころ
ぼやけた記憶だけ繋がって
互いの言葉は滑り落ちて
まるで知らない異邦人
思い出だけで会話をつなぎ
気持ちもこころも流されて
こんなにこんなに離れても
ぼやけた記憶で誤魔化して
保たれていると信じている

隔てた時間を記憶で繋ぐ
点々と分かれた人々が
時間を縦に整列して
これからもずっと
繰り返されるばかりで
それならそれでいいのだけれど

何のゆえにかあの頃は
机の前に腰掛けて
片肘立てて窓の外
教室のざわめき聞きながら
光を浴びて眺めたろう

外では体育の授業中
たわいもない準備運動
中では誰も気に留めない
国語の先生の長話
何のゆえにかあの頃は
ああして存在していただろう

ただそのことだけが悲しくて
ぽっかり胸の底に横たわる

それは今日も同じこと
机の前に座ってみせて
ノートを開いて筆立てて
片肘立ててこうして言葉
並べて選ぶこの時も

いつかこうして小さな部屋で
ぼんやり座って手の平を見て
それだけが思い起こされる頃には
寂しいな小さな悲しみだけが
きれいに消えてしまうのだから

ただそのことだけが不条理で
どうしても分からないだけ

ただそのことが馬鹿馬鹿しくて
たまらなく不愉快なだけ

作成時2001/11/17
2007/3/21改訂

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