通り過ぎて行くー眠れないで

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通り過ぎて行く

時の流れが
一日たつごとに
おとといより昨日
昨日よりも今日
すこしずつ速く
通り過ぎて行く
ただそんな風に
思えてなりません
今日一日をそっと
振り返ってみて
ああこれだけか
ただただ馬鹿らしく
さっきまで聞き惚れた
音楽すらもろくに
浮かべることも出来ず
ひどくぼんやりして
歌詞すらよく分からない
それなら何のために
わざわざ聞いていたのだろう
何のために読みふけったり
書き殴ったりすること
必用だというのだろう
どうせ何もかも
すぐにぼやけて
その存在すらも
すぐに分からなく
なってしまうのに

時計の音がします
チックチックと秒針が
未来を築いています
でも何もかわらない
今までもこれからも
何をしても意味はない
今までもこれからも
そんな風に心の中で
つぶやくものがある
なぜなのだろう
本当は意味なんて
必要なくても人は
愉快に生きていける
簡単な魂の構造を
持っているはずなのに
なぜこんなにも
すべてが馬鹿らしくて
たまらないのだろう

少し前のことを
また忘却して
今書き記している
鉛筆の動きにあわせて
時がまた少しだけ
流れていくのを実感して
それでもノートを閉じて
静かに横たわれば
翌朝にはこの落書きも
ろくに覚えてはいない
ただ空白のひととき
何も覚えてはいない

書かなくても
なお同じことなのだ
もういい加減にして
静かに今日を終わろう
いのちを終えることは
怖くて出来ないくらい
臆病な動物なのだから
せめて落書きを止めて
静かに眠りに就こう
明日の朝になったら
また懸命に起きあがり
時間に遅れないように
立ち上がらなければならない
なんのためでもない
まだ生きていたいから
ただそれだけのことを
生活と呼んでいる
それだけのことには
違いないのだけれど

眠れないで

ねえ小さな子供の頃の思い出が
順番もなくあふれ思い出されては
懐かしく遠い日の気持ちが
心の中にぼんやりと浮かびます
たまらなく遣りきれない
いっそあの頃に僕を連れ去るか
さもなければ思い出なんて
心の中から消し去ってくれたら
どれだけマシだろうか

遠く静かな夜の街灯
静まった町の大気
忘れた頃に掛け抜ける
大通りのヘッドライト
天高くには大地を照らす
青く輝く月の明かり
そして地上の照明も
天上の静かな灯火も
まるで区別していない
不思議そうに見つめる
小さな自分の瞳
みんなまだはっきりと
心の中に浮かびます

もう掴み取れない
自分を離れた記憶が
浮かでは消えてゆく
きっと今この時も
何時の日か今のように
小説でも読むみたいに
はっきり思い出されて
でもおとぎ話のように
淡く遙かな絵空事

不意に寂しくなって
考えるのが怖くなって
もう何も考えない
このままぼやけて
今日を終わろう
結局また無駄な記述
ノートに書き連ねて
その分だけ時計が回って
夜がもう少し更ければ
その分だけ眠くなるのだから
おやすみなさい
静かに布団の中で
今日を終わりにしよう

作成時2003/11/11

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