それでも求めている

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それでも求めている

こころの中崩れて
必死に助けを求める
何をしたらよいか分からず
不安だけが満ちあふれる
誰かに聞いて欲しい
本当はそう想っている
でもこのような話し
誰が受け止めるというのか
そんな人は居るはずのないこと
居たら間違っていること
一番よく分かっている
それでも心苦しくて
誰かを必死に求めている
無様なくらい淋しくて
またペンを走らせる

満員電車のなかで
人混みの大通りで
君などいなくても
代替品などすぐに
同等以上にあなたの
代わりになるほどの
沢山の人々が
互いにこんなに沢山
歩き回っているなかで
なぜ君は愚かな頭で
自分にかけがえのない
大切な個性などあると
そんな馬鹿げたことを
無頓着に思えるのだろう
個性など影も形もなく
思想もまるでない最安値
質素な感情だけで生きる
雄叫びの若者ほどに
自分に意味があるなんて
平然と思いこめるのだろう
通俗性、厚顔無恥、
あるいはただ本能まかせ

ほら、今素通りした
同じような服来た青年が
自信に満ちたからっぽの
図々しい笑顔で高笑い
その下卑た雄叫びの
なんと君によく似たことか
そんなあなたの代わりが
こんなにも溢れている
なぜ気づきもせずに
自己があるのだと
恥もなく言い放つこと
出来るのだろう

考えたら負け
果てなく続く
蟻の行列の
一匹に過ぎないこと
なぜ実感せずに
平然と生きていけるのか
考えたら負け
だからさ
意味なんて何もない
ただ自身のことだけを
後生大事に出来る
自分が第一義だと
信ずるようにプログラム
産まれる前に記述され
稼働しているうちは平然と
プロテクトに護られている
だから真実なんて言葉
考察から離れて感情には
飛び火しないように作られていて
どんなパスワードを用いても
鍵の開けられることはない

ただシステムの稼働せず
あるいは自分の意志で
無理矢理書き換えをした
愚かなたぐいまれなる
失敗作品だけが感情で
自己存在の意味のなさを
自己意志の無意味さを
心の真髄に楔のように
貼り付けにされた御子(みこ)の
貫き通す刃(やいば)のように
巨大な闇にぶち抜かれて
おぞましい恐怖にさいなまれ
すべての気力は打ち砕かれた
すべての勇気は打ち砕かれた
すべての希望は打ち砕かれた

そんな絶望の叫びと
無頓着の自己肯定は
ほんの薄い紙一枚ほどの
裏と表の関係に過ぎないのに
著述されたプログラムに保護され
大丈夫あなたはきっと
その気持ちに触れることは
永遠に無いはずだから
ただ思想だけを駆使して
ほんの少し浮かび上がった
虚像を眺めて得心して
私も見たと愚かにも
思いこむことが出来るから
きっと命尽きるまで
闇に触れずに居られるから

こんな話しを
誰か聞きたいという人
あるいは話したいという人
この世に決して居るわけない
もし存在してもきっと僕が
今度は不愉快をむき出しにして
その男を軽蔑するだけのことで
つまりは触れられたくない話
触れたくもない話のはずなのに
どうしてこんなにも誰かに
この苦しみを共有して貰いたいと
僕は必死に求め続けるのだろう
淋しくて淋しくて想いのすべて
誰かに背負って貰いたいと必死に
願い続けるのだろう

同じところをぐるぐる廻って
今日も廻って
明日も廻って
それでも求めている
適わぬ夢を求めている
誰かの姿を求めている

作成時2008/08/07

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