月明かりの夜更け

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月明かりの夜更け

窓の外から光くる
すっかり寝静まった
春先の街灯がひとつ
ぽつりと家のかど
舞台みたいに照らしてる
町中は月の明かりに満ち
家々は屋根をてからせて
音もなくきらきらとして
蒼い砂金を流すものか
さらさらと清めるように
すべてが洗い流されてゆく
磨き出された町中は
月明かりをたくわえて
自ずからに仄かな色を
蒼々として返すように
はるかなシルエットまで
輪郭を描き出した
今ただぼんやりして
ほんの少しの間だけ
おのれを忘れてもいい
一際輝く手すりにもたれ
大気を大きく吸い込めば
人気の消えたすがすがしい
大気にも初夏の気配がする
このままただ生きていても
いつしか夏は巡り来る
命を長られるものには
幸せも訪れるだろう
そんな下らない気持ち
しばらく本気で信じ込み
ほほえむように天のライトを
こころに浴びてたたずんだ
静かに夜が更けて
僕はまもなく眠りに就こう

作成時2008/08/08

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