人の基準

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人の基準

ほんの少し前に覚えた言葉
どんなに想い出そうとしても
もう何一つ浮かばない
遠くの昔に眺めた景色
ほんの昨日の出来事も
それぞれにぼんやりとして
何だか心もとなく
かすれた鉛筆画みたいで
どうもはっきりしない
何もかもがそんな風に
有耶無耶に濁りつくされ
ただ時間だけが次第に
速く感ぜられるばかりで
風景は車窓から後ろに
消えて無くなるだけでした

僕の思いも
ひどくおぼろげで
もはやはっきりせず
生きていたという
小さな証しさえも
まるで心許なく
やがて期限が
取り立てを迎えれば
初めから僕なんて
無かったことと同じ
価値を失うばかりで
だったらもはや
今すぐにこの魂を
返済したって何も
変わるはずがない
それなのになぜ
消えることがそんなに
悲しく怖ろしいのだろう
こころ震える

ねえあなた
どうしてそんな
平然とした顔で
歩いていくことが
出来るのでしょうか
何を話ししたって
何を成し遂げたって
誰と触れ合ったって
本当はあなたである
必要性など何もない
代用品に満ちあふれた
規格品の一種には
過ぎないというのに
誰かに勝っても
世界で一番の
称号を獲得したところで
同種の規格品には
何も変わりはないというのに

人の基準など
個体の価値など
本当は何一つ
意味などあらぬと
なぜ実感しないだろう
なぜ怖くないだろう
なぜそんなにも
自分の気持ち
自分の存在
下らないエゴ
プライドとかいう物
真実だと捉えて
のうのうと生きること
出来るのだろう

そう
結局
そういう風に
造られている
壊れないように
禁断の扉には
固く鍵が掛けられて
生涯覗き見ることの
無いように造られている
ただそれだけのこと

P.S.
よいお知らせです
きじゅんにも二つありまして
基準の方はといえば
比べる時のよりどころや
満たされるべき決まりであり
規準の方はといえば
それによって行動するための
そのように社会が求めている
いわゆる拠り所なのだそうです
何ですか
そんなこと誰だって
十分知っていますか
また自分の無知を
さらけ出しましたか
人様にためになること
出来ませんでしたか

2008/08/23

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