きっと

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きっと

がらんどうの価値なきものは
ほんの束の間に消えて無くなる
一粒の泡みたいなものだから
せめて泡がはじけるまでの
刹那のよろこびに浸りつつ
幸せをきっと踏みしめながら
歩いて行ければいいのだけれど
何故それすらうまく行かないで
沢山の人が部屋の中で
苦しくて膝を抱えたまま
震えながら泣いているのだろう

どんなに空っぽだって
世をつかさどる針の動き
真面目なものに思えた頃
一人ひとりの胸のうち
穏やかに明かりがともり
寂しい寝床に入ったからといって
安らぎは仄かにそそぎこみ
きっと明日を夢に抱いて
眠ることだって出来たのだけれど

どこを見渡しても仲間はなく
どこを見渡しても嘘ばかりで
安っぽいエゴと思想の欠落と
それから醜い笑い声ばかり
それだけを世の中に見た人は
生きたまま墓場に埋葬され
ただ死に向かってとぼとぼと
苦しみを噛みしめるばかりで
もう何も楽しいことなど
幸せの欠片なんて探しても
どこにもありませんでした

深く息を吸ってまた
深く息を吐いたりして
どうにか心を落ち着けまして
小さな嘘にしがみつくみたいに
誤魔化し誤魔化し生きていくのだ

きっと哀れな姿は鏡の向こう
ほんの束の間ページをめくり
読みしきるくらいの命なら
せめて鼓動を楽しめるくらいの
幸せを感じてみたいのだけれど
なぜあんなに空のかなたに
掴めない雲は揺らめくだろう

やがて父の影は消えにけり
やがて母の影は消えにけり
そうして唯一の家族の影は
我が世界から消え失せて
はや追う私の鼓動さえもはや
軋んで止まるほどの黄昏に
幸せも不幸もなかりけり
ただ空しさのみ広がりて
広がるままに溶けて行く
闇となって消えて行く

僕はただ生きていることが
寂しくてたまらないだけのこと
何も考えない快楽動物が
怖ろしいばかりのこと
薬品で滅茶苦茶に塗りたくった
生き物が不気味なだけのこと
喜怒哀楽ところころ変わる
言葉にはおののくばかりで
お勉強がお出来になるとか
そんな下らないことではない
理性とはどこにあるのだろう
それは人の世には存在せず
誰かの夢の中だけに
いつもひっそり横たわる
そんなまぼろしに過ぎない
幻影の願いだというのであれば
なぜ僕たち初めからきっと
動物として餌だけ食らって
生きるようにと教えられないだろう
僕はそれが哀しくて
またひとりで惚けてしまう
真っ赤な夕焼けがきっと
顔を焼くようで頬が熱い

2008/12/07

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