理性

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理性

理性という言葉について
僕には何も分かりません
酒の酔いにうわついて
思索はもつれるみたい
こころの中でなんとなく
不愉快だけが込み上げる

思いきり握りしめた
空になったグラスを
悲鳴をあげてドアの
壁に叩きつけるほどの
けものじみた衝動が
こころを駆け巡る

僕は静かにきっと
立ち上がって台所に
洗ったグラスを指先に
キュッキュと音立てて
つまらなそうに床の中
横になって笑ってる

涙を無くしたからには
胸のつぶれる思いさえ
微笑み満たしてすごすほど
歪んだような心もまた
不意に震えるみたいに
起き直った部屋は暗いのだ

もいちどグラスに指先で
キュッキュと音をたてながら
哀しいほどにお湯割りなど
ほほえみにして作ります
それで頭はまわらない
感情だけがまわってる

揺れる透明の液体に
僕は尋ねてみたいのです
なぜあのときこのグラス
叩きもせずにおとなしく
みんな消してしまえる君の
こころの奥が分からない

優しく酔いは更けにけり
なみだなどはあふれまい
何とも言われぬさみしさの
湧くほどの言葉の数だけが
不意に開いたノートは白くて
合間を埋めてゆくばかり

僕はいつも呆れるのだ
翌日の目を覆うばかりの
蟻の並んだ言葉の群れに
解析すればただ一言の
いたらぬこころの感傷を
弄んでいるばかり

こんなこころのうちさえも
あざ笑うならばなおのこと
酒また飲めれば済みもする
されどもあるいは君がこころ
小さな傷さえあたえたら
僕はどうしたらいいだろう

それでも人のこころうち
誰かにきっと預けたいほどの
思いも願いも絶望さえも
そっと開いたおみくじさえも
引いたそばから哀しくて
小川に棄てるばかりです

酔いと願いのはざまみたい
豆電球のあたたかそうな
光を透かして口付けて
このグラスを投げたとて
粉々にするのもお粗末な
虚栄のこころかと思うのです

ひどい文字の並べても
粗末な言葉の並べても
みんなアルコールに浸して
さっと火などおこしては
ほのうの姿に真っ青になり
あわてて水を掛けるのみ

詩は台無しになって
せりふは棒読みになって
僕らはもうくらくらとして
形式も拍子も抜け落ちて
こんなんじゃ駄目だと
目眩すらも覚えるままに

そのくせ眠りには
付けそうにないのだ
疲れたままに瞳が冴えて
何を求めてさ迷うのだ
お願いだからしばらく
少しでもいいからこのこころ
ぐっすりとおだやかに
眠らせて下さい

2009/01/07

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