灰色の道

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灰色の道

人の思いなどという
取るに足らない芥(あくた)のようなもの
僕にはたまらなく重大で
だらだらと流れゆく毎日の
けれどもきっと夜明けには
いつしかきっとかがやける
素敵な世界がその先に
広がっているに違いないのだと
信じてどうにか歩いて来ました

僕はとんだおっちょこちょいだ
そんな馬鹿げた夢物語
安っぽい人生広告の
薔薇色宣伝に誤魔化された
愚か者には違いありません

演繹されべき翌日の
過去から導き出される一方の
飛翔せぬ連続体の
連なりのうちに朽ち果てる
馬鹿みたいな毎日は
どうしたって馬鹿みたいな明日を
呼び起こすには決まっているのに
まるで奇跡やら誇大広告やらで
こころなだめすかして人々は
慰め合ってとぼとぼとぼとぼ
町並みを歩きゆく有り様です

拍手をもらってそれが幸せ?
賃金増えたらそれが幸せ?
人に勝ったらそれで幸せ?
名声得たらそれが満足?
家族が出来ても娯楽ばかりの、
毎日の笑いが幸福の姿?

ちゃんちゃらおかしく腹立たしく
僕は泣きそうな気配です
肥大した個体が雄叫びを張り上げて
自我を主張する一方で
そんな幸せなんかかかげても
なんてつまらない柱一本
電信柱の景観損ねと
競い合っては伸びゆくばかりで
町並みは穢される一方で
言葉は乏しく朽ちゆくばかりです

走るに必要な言葉と
仕事に必要な単語と
喜怒哀楽の雄叫びと
情の通わぬ虚飾の戯れ言と
誰もが言葉を道具と見立てて
無頓着にこねまわしたら
リズムをなくした不気味な会話が
乏しく繰り返されるようになりました

幾とせ流れて生き抜いて
せっせと働き声張り上げて
それでも虚しく響き渡るいっぽうで
四択くらいの惨めな答えが
ときおり返ってくる一方で
惨めな符号の会話ばかり
垂れ流された情報の
かけらを摘んで弄んで
鸚鵡返しに主張する一方で
互いと互いはどれもこれもが
代替可能なお人形くらいでは
誰への友情やら愛情とやらも
せいぜいまるやら三角の
符号くらいの質素なものに
成り果ててなおさえずりの
巷(ちまた)に溢れかえるばかりです

汚れた波に飲み込まれて
息も継げずにばたばたと
手足をさ迷う苦しみは
果てることなく繰り返す
共に歩めるものもなく
共に語らうものもない
ただ黙秘するのが恐ろしくて
僕はいつわりの言葉でもって
必死に叫び続けるだけなのです

僕はまだ惨めに歩いています
何だか毎日はただ不気味なのです
人の顔が近頃は区別もつきません
まるで犬でも見分けの付かないみたいに
どれもこれもが動物に見える始末です
僕はもう壊れてしまったのでしょうか
今ただ恐ろしさばかりが募るばかりです
もう助けてくださいとは申しません
本当に壊れるとなった日には
何とか最後の勇気を振り絞って
自らを律する最後の掟を
どうにかかかげて滅びゆく
それだけが最後に残された
僕の人間らしさと言っても
いいだろうとは思うのです

2009/9/2

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