夢ばかりで

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夢ばかりで

夢ばかりで歩いてきたのです
なのに見ひらく瞳の先には
こんなに下らないがらくたばかり
僕はいつの日か本当が訪れて
もっと立派なたくましい社会が
目の前に広がる時を夢見たのでした

夢ばかりで歩いてきたのです
今こうして見ひらく瞳には
こんなにも下らないがらくたばかり
僕はいつの日か途方に暮れて
このまま萎んでいくばかりの
下り坂をてくてく歩くようになりました

夢の中に浮かぶ人々は
もっと本当の言葉を話ぶりで
時折真面目でもあり
僕の不甲斐なさを咎め
もとしっかりした生き方を
僕に教え諭したものでした

なのに瞳を見ひらくやいなや
でくの坊みたいな言葉なくした
雄叫びみたいなおりの中に
与えられた餌を喜びにして
世界は成り立っていたのです
歩き疲れたこの僕は
ただただ途方にくれました

人と人の築くべき複雑な回路が
薄っぺらな箇条書きに置き換えられて
人の数ほどの言葉の広がりは
画一化された自動羅列くらいの
あるいは奇声にも似た感情言語の
どれもこれもが人でなしのまま
お腹が空いたと叫ぶ一方でした

町を歩くと雄叫びが響きます
それはもはや動物園みたいな
檻のない動物公園みたいな
雄叫びばかりが谺するのでした
夕暮ればかりが哀しくて
真っ赤になみだを流すのです

夢ばかりで歩いてきました
夢の世界での人々は
本当に立派でありました
僕ひとりだけだらしなく
駄々っ子みたいに情けなく
本当に立派にならなければと
どぎまぎするくらいの世界でした

今はやこうして落ちぶれて
檻の世界をとぼとぼと
朽ちゆくばかりのこの僕は
こんなに安っぽいゴミ箱に
産み落とされたが哀しみを
一歩一歩に噛みしめながら
誰をか恨むこともなく
ただただ己の醜さに
打ちのめされるばかりです

2009/9/6

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