終末の風景

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終末の風景

言葉嫌いになりました
自分の文字の羅列ほど
見るも無惨の不愉快で
自分の言葉の端々が
耳に触ってがさごそと
胸を掻きむしる思いです

人ごみばかりを逃れては
吐き出されてた駅の夜
ベンチにへたりと崩れ落ち
耳を塞いでうずくまる
まるで不気味な生き物に
追い立てられるみたいです

誰かの話も近ごろは
ちくちくちくちく痛みます
何のことやら分からずに
鳴き声みたいに聞こえます
どうか檻から出してください
死ぬまで堪えていることが
自覚せられた今となっては
真っ暗の闇が辛いのです

それさえ自分の言葉さえ
皆目分からぬこの頃を
ノートに記した羅列さえ
何やら気味さえ悪くなり
読んでて穢れる思いさえ
湧き出るような有様です

日にちが怠惰に変わりゆく
この世界には何もなく
鼓動を確かめるばかりです
灼熱太陽の下でさえ
干からび尽くしたこころでは
震えんばかりの怖さです

土塊(どかい)に帰ればことさらに
さりとて変われることもなし
何十億もの数ならば
個体の意味など紛れなき
空っぽじみたる道しるべ
けれども何でか誰一人
虚しくならずに歩きます
そんな認知がありますか
知性のおまけは囚われの
関心事から出でもせず
そんな理性がありますか

生きゆく姿で埋葬された
石ころ加減を思想ではなく
単なる言語のかけらではなく
感情そのままに掴み取ったら
その人はたぶんもう二度と
幸福などにはなれません
ただその先にぽっかりと
佇むものが闇なのです
ただそれだけが感情の
動物じみたる無頓着
乗り越えたくらいの認知では
ないかと思いはするのですが……

僕はまだ入るのが恐ろしくて
ここで震えているばかりです
そうして最近では言葉の意味が
次第に分からなくなってゆきます
自分の声がなにやら動物の
鳴き声と区別がつきません
僕はどうしたらよいのですか

神様なんて居ないなら
いのちの明日が無意味なら
せめて僕たちひとりひとり
動物らしさを乗り越えながら
わずかばりの人と思えるほどの
よりよき社会を手渡すために
ひたむきに歩きたいと思うのに
せめて僕たち真面目な言葉で
言葉を交わし合いたいと思うのに
そればかりが僕たち路傍にひそむ
石ころばかりを忘れさせ
人のいのちの価値あるものと
こころに浮かべるものなのに……

妖怪が欲望でけたけたとばかりに
不気味に笑う動物の
無意味な姿が現世だと
教えてくださったのは誰ですか
僕は最近言葉さえ
次第に失っていくような有様です

2009/9/9

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