どんなにこころが穢れても

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どんなにこころが穢れても

こころが穢されました
こころの中が穢されました
こうして穢されたからには
もうまっさらには戻れない
穢した人々の薄気味悪い
顔色ひとつに怯えながら
僕はすっかり落ちぶれました

瑞々しい若葉が色を忘れ
なめらかな風船が萎れるみたいに
こころの中が穢されました
こんなに穢されてしまったら
優しい風の音は聞こえてこない
けれども穢した人々の薄気味悪い
嘲笑ばかりは耳にこだまし
僕はすっかり怖じ気づきました

意志さえあれば墨にまみれても
清らかなのだと唱えるものがいます
だれかあの愚物を葬ってください
たった一人ひたむきに歩きつづけ
支える者なくせめて清らかであれと
自らにくびきして寂しさこらえ抜き
もう歩くことさえくたくたとなり
その刹那に墨をぶっかけられたのです

誰が黒くまみれた泥だらけの
穢れたこころをまっさらだって
言い切ることが出来るのでしょうか
どんなに洗っても落ちないくらいに
墨の色が滲んでくるのです
消しても消しても消しゴムの
黒い滲みが残るのです

もう朽ちていくのだから
穢れゆくこそ本望だなんて
そんな馬鹿な悟りを開いたのは誰ですか
僕たちせめてこころうちばかりは
清らかにして最後までたもち続け
歩いていきたいものでありますと
願うが理想世界の翼のあり方と
真の歩みの姿ではなかったのですか

つまりは口先ばかりなのです
最後まで突き詰めないで適当に
妥協したこころでもって推し量るから
そんな出鱈目が出てくるのです
そうしてそんな出鱈目なこころでもって
あなたがたは人のこころを穢して回るのです

こころが穢されました
こころの中が穢されました
こうして穢されたからには
もうまっさらには戻れない
奈落の底さえ這いずり回って
どんなに逃れようとしたものですが
さりとて出口は見つからず
いつしか僕ら諦めたみたいに
そこが居心地よくさえ思えてくるのです
だってそうしなければもう
自分を慰める最後の矜恃を
保てなくなっちまうじゃあありませんか
そうして穢されちまった僕たちは
奈落の住人となるのでしょうか

穢されちまうなんて古いという人がいます
おかまいなしこそ幸福なれと叫ぶ人がいます
享楽ばかりが僕らの歩みなら
僕ら始めから智恵を振り絞って
何を生み出す必要さえなかったはずなのに
そのような叫びをする人ほど
何も生み出さずにただ雄叫びばかりを
張り上げるのが生業のように心得ているのです

当たり前に疑問を抱き
震えるままに踏み出すとき
初めて清らかなるものを知るのです
初めて穢れたものの醜さを知るのです
知ってもう一歩あゆみ出すとき
初めて一歩分の道が生まれるのです
そうやって歩んできた僕らの道を
鋪装されてからようやくオプティミストたちが
穢しながらにだべって付いてくるのです

恐ろしい光景です
それはとても恐ろしい光景です
けれども誰も咎めない
そして僕のこころは穢されて
僕らはきっと干からびかけた
病気の葉っぱみたいになっちまうのです

けれどもねえ
僕はまだ歩んでみせる
どんなにどんなに穢れても
まだ歌うべき歌だけは
こころのなかに残されているのだから
泥水を吸ってでも僕はみすぼらしく
最後まで歌い続けてやるのだ
それをせめてもこの世に生を受けた
最後の復讐みたいにして……

2009/10/01

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