悲しみの歌

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悲しみの歌

明け切ってなおも眠れぬ有明の
真白き月を今は慕うよ

頼まれずうかつに芽吹くと木枯らしの
凍えるこころ日だまり欲しさよ

あんた笑うだけど僕には精一杯
今日からあんたは僕のかたきだ

酔いどれを馬鹿にするなといきりたつ
それな気概も染まる落ち葉よ

夏焼きのとうもろこしを甘くちの
それな遊びもはるかむかしよ

夏風を家族で笑った昼飯も
海の家さえなきし浜辺を

待ってよ、ねえ、お父さん、お母さんってばさあ
みんなどこへ行ってしまうのですか

寒空に震えてばかりの磯鳥を
とっつかまえて食うは誰かも

探し出せ殺してしまえこの国に
同じ思想を持たぬやからを

肌に触れみずみずしさのおもかげも
泣きしゆうべにうまおいの唄

ああだってさあ僕とて懸命に生きてきた
いまさらこんなありさまではきっと済まないとは思うよ

道化師の震えおののく断末魔
笑いの渦に消されゆくかも

淋しくて枯れそうなほど若草の
短きいのちのともし細るよ

床にふれ侘びしさ一途を積もる夜
雪の清らもこころ濁りよ

話しごえ盛りの猫の唸りにも
ただ本能のこだまする街

しかばねを願うが町の穢れとて
生きろと叫ぶ汚泥のあるじよ

更けゆけば夢にさ迷う終末を
穢れと知らぬ人ぞ吐き気を

道化師の震えおののく断末魔
笑いの渦に消されゆくかも

滅びさえ願いごころも若草の
絶望いまだ真を悟らず

さくらさくら咲いたふりして穢れてた
ぬかるみばかり続くこの道

「やんぬるかな」ひとりごとして笑ってた
ひとりぼっちのペチカ眺めよ

これでなお歌とは言いはるわたくしの
誰をか知らんや祈りごころを

僕はもうひとりでどしどし歩いてみせる
これだけ歩んできたものですから

希望さえかけら残してこぼれゆく
風よ悲しみ染める夕暮れ

膝を抱きぬくもり淋しき窓辺には
祈りとどかぬ星の流れよ

2009/10/02

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