ある言葉の一挫折

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ある言葉の一挫折(ひとざせつ)

 さっそく黎明は来た。立つべき足をもたなかった私のもとへ残されたあまたの羅列は、ある詩人のたましいのようには私のもとから羽ばたかなかった。私はただ、夜更けの哀しみののぼせるような寂寞の中でその未熟さの極限を垣間見る。私が満たしきれなかったそれらの情熱は、未来へのidentityを保つほど、気丈な振る舞いをなし得なかった。私は刺される刹那まで歌い続けるべき我(わ)がいのちの怠惰を悲しむ。まるで干からびた喉を潤すためだけに急かされた大ぶりを焼酎で満たしうるほどの焦げ茶グラスを、氷滴(ひょうてき)で滲み出た酔い歌の黄昏を、むせかえる勝負酒(ざけ)を、私は私の哀しみをもって分けい出す。それがどうした。
 私はただ、夜更けの哀しみののぼせるような寂寞の中での未熟さの極限をのみ垣間見た。それは私が刺されるまで止めぬ大饒舌のつかの間垣間見る沈黙の、踏み込む途端に拡大する酔いで満たした私の希望のようには、私をなだめなかった。私はただ、我が怠惰を諫(いさ)める。まるで干からびた喉を潤すためだけに急かされた大ぶりを焼酎で満たしうるほどの焦げ茶グラスを、氷滴(ひょうてき)で滲み出た酔い歌の黄昏を、むせかえる勝負酒(ざけ)を、私は私の哀しみをもって分けい出す。まだ知らぬ酒の咎さえ見いだせぬほどの逃避の極みを、我がこころは今もただ憐れとばかりにわきまえる。夜更けの哀しみののぼせるような寂寞の中でその未熟さの極限を垣間見る。夜更けの哀しみののぼせるような寂寞の中でその未熟さの極限を、我が怠惰とのみ記録する。眺めまわすほど飽き飽きとした座椅子のもたれから、そうして私は酔うためにかざしたグラスをひと言に捧げるために、
「酔いさえなけりゃあお前もすてたものでもないのだが」
とまるで干からびた喉を潤すためだけに急かされた大ぶりを焼酎で満たしうるほどの焦げ茶グラスを、氷滴(ひょうてき)で滲み出た酔い歌の黄昏を、むせかえる勝負酒(ざけ)を、私は懐かしみをもって口から胸の奥へと流し込む。何も愛すべきものもあらぬ己の業を、憐れな干からびちまったこころのように思い返しながら、私はこの怠惰の落書きの走りゆくかなたの結末を願望した。
 立つべき足をもたなかった私のもとへ残されたあまたの羅列は、ある詩人のたましいのようには私のもとから羽ばたかなかった。私はただ、夜更けの哀しみののぼせるような寂寞の中でその未熟さの極限を垣間見る。私が満たしきれなかったそれらの情熱は、未来へのidentityを保つほど、気丈な振る舞いをなし得なかった。私は刺される刹那まで歌い続けるべき我(わ)がいのちの怠惰を悲しむ。まるで干からびた喉を潤すためだけに急かされた大ぶりを焼酎で満たしうるほどの焦げ茶グラスを、氷滴(ひょうてき)で滲み出た酔い歌の黄昏を、むせかえる勝負酒(ざけ)を、飲み乾しながら眠りに落ちるばかりであった。

2009/10/03

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