灰色の涙

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灰色の涙

秋深く
ひとりを励ます
己(おのれ)かな

蟻でなく
きりぎりすとして
あればこそ

夏の夜
尽きしいのちの
夢ばかり

とぼとぼと
春をうらやむ
隠れ猫

虫低く
ひとりぼっちを
鐘の音

ひもじさを
知るだけ冬の
荒れ野かな

凍てつくを
なぜに凍らぬ
なみだかな

冬の鬼
生真面目ばかりを
ざくりかな

灰色の
廃墟逃れぬ
夢の春

黒墨を
こころの底に
あびる夏

我願う
秋待草の
ささやきを

西日より
声するままを
ひとも散る

銀杏の葉
眺めて今日も
なんもなし

ひび割れの
霜踏みごころの
軋みかな

粉雪も
話し手でしょうか
家なき子

灰色の
なみだ流すや
凍仏(いてぼとけ)

除夜の鐘
懐にはもう
……

2009/10/03

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