自由精神

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自由精神

生活はずたぼろに崩れちまって
僕は今はもうこの世のすべてが憎らしい
罵りたい気持ちがあればまだしも幸せだ
僕はもう今はすべてのものから逃れたい
ただ逃れたい一身でもう誰ひとりとして
話したくないほどの不愉快ばかりが
酔って眠れない疲れあたまをもって
ぐるぐる回っているばかりです

けれどもまだ詩は形式を保って
僕のせめてもの矜恃を全うしようと
最後のあがきを見せているようであります
僕は自由闊達に歌いたかった
けれども僕は最後のより所にした
言語世界すらもまるでぐちゃぐちゃの
汚らしい人間の汚物にまみれて
穢されていることをもはや知ってしまったのです

文芸復興はただ芸術を芸術として
馬鹿みたいに信じ込む人間がいて始めて
起こしうるものではなかったでしょうか

そこに穢れた生き物が這いずり回って
資本家よろしく悪臭を放ったとき
復興は廃退に取って変わられ
永遠のゴミだめへといたるのです

これだけのことがなぜ誰にも理解できないのでしょう
なぜ僕だけがこんなにも苦しいのでしょう
夢のなかにさえ立派なものを掲げては
なぜいけないというのでしょう

滅びの秒針が鳴り響きます
ここまで宣言したからにはもう
僕の滅びの秒針が今や鳴り響くのです
カチカチカチカチ
それは規則正しいリズムです

ごめんなさいね、
あなたには立派に生きることを
ただ約束してしまったはずなのに
時計の針は止まらずに
僕をしがらみから消し去るのです

けれどもその時僕は自由になるでしょう
本当の羽を手に入れることでしょう
沢山の人々が永遠に僕を嘲笑するでしょう
けれども僕はもう躊躇することもなく
思いの丈を記すことでしょう

それは秒針がまだ残されているからであり
僕に言い足りないことが残されているからであり
けれどもいつまた終わりが来るかもしれぬからであり
穢れたものが世の中を謳歌しているからでもあるのです

ああ、本当の立派はどこにあるのだろう
人のこころはまぼろしだなんてほざく奴らを
それじゃあまぼろしを消しましょうと気軽に
刺し殺してはなぜいけないのだろう

言論の自由と責任の回避がごっちゃになって
せっかくの僕の翼をへし折ろうとするのです
殺してはいけないのならせめてたったひとつの
自由だけは僕には残されているのではないでしょうか

こんなはずではなかったと思います
今でもこんなはずではなかったと
馬鹿みたいに悲鳴を上げるのです
酒を呑みながら泣いているのです

ぐでんぐでんに酔っぱらっていやがる
おそらく誰もがそう思うかも知れません
けれども現実はまるで違っている
あなたがたはやっぱり僕の言葉に騙されている

それなら何で僕は騙さなければならないのでしょう
いえいえ、それは少しばかり表現の間違いというもの
僕はわずかにデフォルメを加えたばかりに
みなさまの誤解を誘っただけというのが
まあ現実のところなのであります

それでも酔っていることに変わりはないのです
最近はそうでもしなければ何も生み出せないくらい
精神が乏しくなっちまっているのです
つまりは酒だけが唯一の僕を慰めてくれる
友だちになっちまっているのです

それで何と言うこともないのです
昔はずいぶん苦しんだこともありました
けれどももう僕は人とは話したくなくなって
ぽつんと部屋に転がっている有様です

たぶん最後の諸君の関心は
人に認められたくないものが
べらべらおしゃべりを続けることに
向けられるものと思います

それだからあなたがたは駄目なのです
文脈を読み取る力がまるで足りないのです
僕は確かに人としゃべりたくないとは言いました
けれども人に認められたくないとはひとことも
ここでは表明していないはずなのです

そうやって誤謬のいかさま読みばかりしているから
あなたがたの文章はきっと未だに呪術的なのです
グローバルスタンダードが聞いて呆れます
島国一途が滲み出て、僕たち恥ずかしいくらいであります

さて、そろそろお開きにしましょうか
僕は明日も元気でありたく思います
もう少しだけ、酒を呑むたびごとの
小さな勇気を貰ってはまた
こうしてお目に掛かりたいと思います

お休みなさい
善良なあなたに良い夢を
悪意のあなたには最悪の夢を
それぞれお届けしたく思います

2009/10/23

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