僕はあなたが好きなのです

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僕はあなたが好きなのです

飲み終わったワイングラスの
柔らかな曲線はまるで麗しの
あなたの涙みたいではありませんか
撫でて冷たき頬にきらめく

赤かりしワインレッドの
ほほえむ君のおもかげ恋しく
想い出しては灯りも仄かに
名前を呼んでみやませんか

転がすグラスに離ればなれの
溜息のかなたに君のシルエット
溶かした涙にひざまずく僕の
姿が映ったらよいのだけれど

グラスはきっと伝令手みたいに
転がり戻るよかすかな気配で
気まぐれな小法師(こぼし)くらいの
僕の想いは行きつ戻りつ

こんなにも床のかたちときたら
こんなにも歪んでいるのは滑稽だ
もいちどグラスを寄せて眺めて
さみしくてまたそっと
君の名前を呼んでみている

ああ、もう寝ようかな
明日は何があるのだろう
さあ、もう寝ようかな
変わらない毎日だけれども
そっとあなたの影を見つめて
その日がしがなく過ぎていく
僕はあなたが好きなのだ

願いは叶うべき想いあれども
肝心のわたしは固くななこころで
自らを好まざるの気配に満たされて
哀しくてただあなたの幸せだけを
小さく祈ったりしてみます

一羽の鳥よ夜鳴きの鳥よ
笑いたもうなあふれる願い
明日になったらはきはきと
僕は生き抜くことだろう

おいしいワインをありがとう
愉快な調子でつぶやいて
でもほんとうはきっと
お休みなさいのひとことを
あなたの耳元にかわしてたい
僕はあなたが好きなのです

2009/02/07

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