愛しいあなたへ

[Topへ]

愛しいあなたへ

ひとつだけたったひとつだけ
大切なあなたの約束が欲しい
願いは星屑流れる蒼き深空(みそら)を
ベランダに仰むけの寂しさの中
僕にはたまらなく君のことだけが
思い返されてならないのだから

それはまるでひとり勝手な
あなたの意志など知らぬがまま
片道切符で駆け抜ける夜汽車の
終着駅を待ちわびるくらいの
震えるようなこころの逃避行
小さな小さな孤独の願い

どんなに暗い嵐が押し寄せて
衝立(ついたて)したガラス細工の
希望の結晶を打ち砕く時にだって
あなたはひとりではないのだから
遠くのベンチで君をそっと眺めている
僕が居ることを忘れないで欲しいのです

そしてどんな辛さの降り積もり
おもみが軋むような夜更けにも
どうかこの空のかなた心なだめて
遙かな星達の下で心を静めて
どうか僕より長生きして欲しいのです

僕にはただあなたの歌声だけが
嬉しそうに輝きを増すばかりで
遠くでひっそりと耳かたむける
僕を慰めてくれるのであれば
それだけを頼りにして毎日これから
過ごせるような気がするのです

僕はそれでいいのです
僕はもうそれだけで十分
だから君に願いをそっと届けたい
流れる星に願いを託そうとするから
こうしてベランダで震えているのです

今日はふたごの流れ星が
とめどなくつたう夜なのですから
こうして待っていればきっと
願いも叶う気がするものですから
だからどうかあなたに届けよ
僕のいるあいだはどこかできっと
やさしい歌を止めないで下さい

おやすみなさい
今日も鼓星はまたたいて
大犬座には焼き焦がすような
シリウスが守り神みたいにして
あなたの空をも照らすでしょう
こんな深空(みそら)を二人して
眺めて一生を過ごしたかったと
そんな三流小説みたような
思いも時々うずくのです

あなたはいつも行い正しくして
きっぱりと輝いてくれるなら
僕はきっと遠くにあって・・・

その笑顔をひっそり眺めるだけで
その日はやさしくて幸せだったと
それが僕の生涯でたったひとつの
おそらく恋となることでしょう

2009/2/9

[上層へ] [Topへ]