春かなる強者(つわもの)

(朗読なし)

春かなる強者(つわもの)

遙かなるかな仰ぎ見たる天空よ
春からからと蔦(つた)を絡ませ
雲の揺らぎたる刹那にはっと
我が極上の至福は立ち所に
足を奪われせまる水面(みなも)に
どっぷりつかるよ桜吹雪

春雨なるかな辿り着いたるお食事よ
昼こそこれかと狙いを定め
針の振れたる刹那にやっと
我が極上の至福に向かいて
足を震わせ仕事を忘れ
どっぷりつかれよこの腹鼓(はらつづみ)

張りつめすぎたか躍り込んだる会合よ
今日こそ我(われ)はと威勢にまかせ
腰をあげたる刹那にさっと
我が渾身のプランをご披露(ひろう)
声震わせたる勇姿の向こうに
無常に響くは却下の嵐

ああ、切なし、はかなくも散る
春の夢のごとき淡き希望よ
ああ、切なし、冷たきまなこを
浴びる我が身に非情のとどめ

なんぞ、さえなし、貴殿(きでん)のプランは
春風いずくんぞ、卓上の会計をしらんや
どこ吹く風やら、皆目見当(けんと)もつかん

うつろにさ迷う眼(まなこ)の先に
すげなき君の姿がたゆたう
ああ、笑いたまうな、春風の乙女よ
まだ訪れたばかりの、麗しき人よ
百戦錬磨の血気猛将とても
春眠の怠惰だけは逃れられぬのだ

ハイカラなるかな仰ぎ見たるネオン灯よ
杯からからと今宵も躍ろう
飲み干し置いたる刹那においと
荒武者への惨めなる服従を求め
か弱きボーイに財布を振るう
我に今こそ麦酒をよこせ
我こそ王ぞ麦酒をよこせと

2008/1/16

[上層へ] [Topへ]