命運ヶ先は岡躑躅

(朗読なし)

命運ヶ先は岡躑躅

亡き友、舌三寸浩一郎へ

命運ヶ先の岡躑躅(つつじ)
朝日は無限のためならん
逍遥闊歩のステッキの
つぶさに巌を叩く音
膨張するは大宇宙
こころに響くはモーツァルト

食欲不振の古里は
職に手を持つ親方の
はしっと握るは握り飯
こさえた仁王の鼻ももげ
はしょってとんまの岡っ引き
贈賄(ぞうわい)容疑はあのかただ

滲んだグラスの物干しの
案山子めかした白粉(おしろい)は
そんじょそこらの品でなし
洋行五年の歳月を
かざす涙はセピア色
浮かぶ海月(くらげ)は越前だ

混迷深むる我が歌の
声高しむる伴奏よ
分散開離の五度七度
ペダンティックの宵あらん
黒猫眠るは墓の下
命運ヶ先は岡躑躅(つつじ)

2009/3/18

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