僕の歌うたえ ―即興の開始

(朗読ファイル)

僕の歌うたえ ―即興の開始

宵をはらんで僕の歌うたえ
追憶の胡弓はかすみの空を
うたかた夢見る伴奏かなで
それは遠くの手習いごとよ

夕月かかげて僕の歌ひびけ
ひと気もなくした河原の土手を
枯草押しのけ新芽はかおる
踏む足リズムでラアラア歌え

遙かな煙突もくもくしたら
春も霞(かすみ)となります気配
胡弓いよいよそら耳ばかり
こだます夕べか歌をば歌え

仕事帰りや学生歩きの
とことこ土手をさうなだれながら
ぽっかり浮かんだ雲を知らぬは
見あげよ空を歌をさ歌え

歌詞こそ僕らの源ならずや
うなだれごとなど何様なるかな
想いたくして語るがそばから
僕らのいのちも燃えゆる気配

顔をあげましょ歌うたえ
背筋伸ばして歌うたえ
足並みそろえて歌うたえ
行くも戻るも僕らしだいだ

ルラルラ歌えば心も軽く
春宵(しゅんしょう)満たしてお腹もすいた
河原に角ぐむ蘆を横目に
真似のからすと家路を急げ

あれな夕月おぼろのかなた
春にかじられ歯形もおかし
綺麗なものだね眉をば細めて
歌は今こそはるか響けよ

2009/08/13

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