暗転

(朗読ファイル)

暗転

三十分の情熱続きと
三つばかりの詩のかたち
長針五つを巡らせば
例えばようやく三百分
三十有余の詩を得ると
理論家どもははしゃぎます

けっ、そんなうまくいってたまるものか
僕なんかもうたった三つの詩にしたって
書くだけでなく読み返すにしたって
ほとほとお腹いっぱいじゃないか

理論家どものしてやったり
僕の自堕落攻めのぼる
合点(がってん)すること炎のごとし
的を得ずして燃え盛る
いくら僕でも三つばかりで
言葉の途切れるものでない
論考いたらぬまでもない
ただただお腹が満腹の
御馳走さまに似たるもの
羅列にしたって欲求の
満ち来る果ては眠りなり

長針二十四巡り
それな踏ん張り効かずして
まぶた閉ざして休んでみたり
欲求不満で叫んでみたり
したくなるこそ至極まっとう
生理現象だって起こるのだし
それからお腹だってすくのだし
何もこらえて懸命尽くして
生涯一度の儀式と見立て
誰しもわずかに百の半ばを
一百四十四(いっぴゃくしじゅうし)の詩は書けず
書いたからとて意味もなく
そんなギネスが詩人なら
下劣の極みの悪臭ばかり
稚拙の胎児にはござらぬか
嘲笑と拍手とはあい似たり

僕はそろそろだらけるぞ
情熱の持続が困難だぞ
選手懸命の走りとて
目的のなおあらばこそ
しからばこないな悪戯くらい
即興詩集の情熱ばかりが
乏しき存亡のゆえんくらいでは
まもなく破綻を迎えるぞ

さりとて想いの枯渇のきわに
するべきこととてあるでもなしを
今日は歯医者で茶菓子も食えず
やることなすことつまらなければ
淋しさ募るに任せて今は
即興詩集も筆者のさがと
まもなく暗転迎えます

2009/08/13

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