「梨の雲」

(朗読ファイル)

梨の雲

梨のかたちのはぐれ雲
夏の気配を運びます
長く降る雨さようなら
吹き飛ばすよう風は吹く

こわれた夢の面影も
去りゆく人の欠けらさえ
涙のしずくさようなら
吹き飛ばすよう風は吹く

きらきら奏でる太陽を
迎え入れますそのために
くろぐろ閉したかの雲は
雨を降らせはしませんか

きらめくばかり映えるため
清めるためにかの雨は
胸の奥さえ野山さえ
洗い流しはしませんか

連なる雲はたなびいて
春のまどろみ押し流す
遙かな雲はたなびいて
淋しさひとつ押し流す

梨の姿のはぐれ雲
そよ風色に解かすとき
青空いっぱい広がって
夏の気配を運びます

さよなら、胸の悲しみよ
こころにそっとささやけば
さよなら、胸の悲しみよ
吹き飛ばすよう風は吹く

吹き飛ばすよう
風は吹きます

短歌

芳草の風吹き抜ける丘の辺を
  仰ぎて想う空の青さよ

        2008/5/1

2011/10/13

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