「こさめ歌」

(朗読ファイル)

こさめ歌

あのひとの俤(おもかげ)浮かべ
我ひとり偲(しのぶ)ぶ路傍の
したたるは霧の小雨(こさめ)か
しだれるは柳の枝か
暮れ町の雲は揺らめく

あのひとのほほえみ浮かべ
我ひとり偲ぶ小川の
しくしくとみなも波打つ
しくしくと濡(ぬ)れるしだれ葉
暮れ町は霧雨のなか

あの頃はどしゃ降りさえも
手を取って駆ける町なみ
しろたえのシャツを濡らして
白肌(しらはだ)の肩を抱き寄せ
暮れ町のはしゃぐ恋人

ずぶ濡れに鍵をまわせば
ふたりして逃れる部屋で
つめたさのシャツを脱がして
つまみあう肌をあたため
あふれでるお湯にひたるよ

あのひとの温もり遠く
ひとりして偲ぶ夕暮れ
しんとしたこころさみしく
しんとした部屋はつめたく
灯をともす宛さえなくて
哀しみに募る恋心
いまでもあなたを……

反歌

霧雨の窓辺にふれるおもかげは
  哀しみばかりつのるあなたよ

         2008/8/9

2011/10/15

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