流れ去る雲の間に間に
名も知らぬ春の気配よ
軽やかな風のステップ
待ちわびるこころ揺らせよ
水面(みなも)には枯の小枝も
閉ざされた琥珀(こはく)色して
つめたさのなかに眠るよ
灰化したアルバム一葉
枯づたにつつまれながら
春待ちの夢見の花よ
ほほえみの姿も知らず
凩(こがらし)のなかにまどろむ
冬去ればなんの予感を
叶えてか雲のたなびき
まわた色ぬるむ季節を
鳥たちよ招き寄せてよ
春を待ちいのるわたくし
和やにこころ弾ませ
ほがらかに歌い初めよ
まだ知らぬ恋の予感を
名前さえ知らぬあなたに
いつか会えると
しょんぼりとにぎる手のひら冷たくて
しゃがんだ空にふたすじの雲
そよ風よよそよそしくもわたくしに
若葉満たした夢をとどけよ
しゃぼんだま軽やかにしてあこがれの
膨らむばかり恋の予感よ
春待ちの名もなき人よそよ風に
からまる指の糸のもつれて……
つながるあなたいつか抱(いだ)くよ
2008/6/7
2011/10/13