「軒雫」

(朗読ファイル)

軒雫

雨は降る軒の雫よ
ねず色に染まる街路よ
電線の小鳥寄り添い
睦まじく羽根をついばむ

道端へあふれる水の
どこへ去る宛さえなくて
身を寄せるふたつの影は
ほほえみの傘の間に間に
肩すぼめ濡れ合う腕の
屈託もなくて去りゆく

ひとりして軒の雫を
眺めては溜息まじり
つかの間の語らい人も
なくしては雲を見あげる

なぐさめの言葉ひとつも
なくしてはしたたる雨を
小鳥らは軽やかにして
羽ばたけば揺れる電線
後を追うつがいの鳥の
よろこびはどこへゆくやら

しとしとと雨は止まずに
眺めては歌も浮かばず
遠ざかる二人の影を
傘に追うはしゃぎ姿よ

ただひとり軒の雫を
眺めては溜息ばかり
触れられぬ想いばかりか
流れ去る宛さえなくて
立ちつくす路傍の石よ
雨は止まずに

短歌

待ちわびて雲間の雨に立ちつくす
  路傍の石を知らぬひとかげ

        2008/6/11

2011/10/13

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