朝、風立ちぬれど
柿の実、ふたっつもあって
平常(いつも)は足早に過ぎていった
僕は追っかけはしまい
(そしたら、恋愛詩なんて、
書き損ねの白紙だ。)
こんな気配は、実はしょっちゅうあって
そうして、いろいろといらぬ世話を焼く
まあるい薬罐(やかん)の湯気は真っ白
(も少し真面目におなりよなんて、
細君[つま]などはまるで言うのです。)
夢想より到りし、ビー玉みたいなもの
空にじませるほど、碧々(あおあお)として
昇る風船の憧れみたいに、慎ましく
僕はそっちにこそ手を伸ばそう
(そしたら、詩人の魂とやらは、
ノートの縁[ふち]から逃げてった。)
詩篇より夜想曲へと到りしもの……
カプリッチョの気まぐれをのみ愛せよ
祈り、あるいは夢のごとき戯れと、
握りこぶしの中の、詠い損ねのポロネーズ
朝、風立ちぬれど
柿の実、ふたっつもあって
平常(いつも)は、足早に過ぎてった
でも、僕は追っかけはしまい
2009/2/28
2009/06/12改訂掲載