恋の歌

(朗読ファイル)

恋の歌

あのさ、僕のねえ、薬指にね、きっと
指さすたんびに星はきらめき
糸はひとすじ紅き色して
流れゆくような気配ですから

あのさ、僕のねえ、薬指とね、君の
たぐり寄せたら銀河のかなた
君はひとすじ舟に揺られて
澪を尽くして来るのでしょうか

だからって、僕のね、まことは、君の
すべてが欲しいと星にささやく
それから、僕らは、肩さえ、寄せ合い
いのちのすべてを確かめ合おうか

男とか女とかそういう愛らしくもあり
またそうとは言わせぬくらいのものでもあり
僕らの今宵はせせらぎで満たされ
にこにこしてたね銀河の祈りと
尽くすことなきまばたきばかり
それ一粒のいのちの軽さと
支え合うよな指のぬくもり

あなたの指先ふんにゃりしていた
つめたく滑って腕までなめらか
のぼっていっても怒られないなら
頬を引き寄せ口づけ交わそう
震えるみたいなあなたの仕草と
小さな僕のよろこびなのです

僕らはつつがなく眠りましょう
こんなお空のすべてを包み込んで
袋詰めにしたとて何になるやら
とらえきれないあなたのこころを
もどかしくって求めていたっけ

まどろっこしくて
でも嫌ではなくって
瞳はやさしくって
奥は果てしなくって
奥は果てしなくって
銀河もいまやひっそり
あなたの瞳にばかり
横たわっている気配です

僕らは安らかに眠りましょう
下界にはいろいろ嫌なことばかり
あれこれと繰り返されたものですから
僕はもうあなた以外はなにも求めない
胸の鼓動を確かめ合ったり
もつれてふわっと戯れてみたり
それから眠っていたいよな毎日なのです

ああ星がみえるねえ
あいつらいかなる名前で
僕らの世界にわずかばかりのひかりを
照れくさくってほほえんで見せているのか
それは僕にも分からないけれども
ねえ、おやすみ、君はいつも
澄んだ瞳のかびろき胸の
安らかな寝息と寄り添って
眠りましょうか僕らこれから

ヨフケヲ、ヨコタウ、オホシノ、ナガレヨ
ボクラニ、トドケル、サザナミ、ミタセヨ
サレドモ、カナシク、ヒトキハ、アカルク
キエユク、オホシハ、ボクラノ、イノチカ
ソオツト、アシタヲ、ムカエテハ、マタ
トドマル、コトナキ、ケハイ、デスカラ
アワテモ、セズニ、オドロキモ、セズ
ボクラ、アシタモ、オカオ、アラツテ
タガイノ、ヒトミヲバ、ドコマデ、シンジ
アルイテ、ユキタイ、モノデアリマス
僕のね、君への、小さな、オクリモノ
それはね、好きです、アナタ、ばかりが
小さな、お星の、かけら、ナガシテ
ひかりを、放ちて、スウツト、消えます
お祈り、しましょう、永遠(とわ)に、ふたりの
僕は、あなたを、あなたは僕を
愛するみたいにして、そっと朝日を待っている
登り来る、朝日の荷車を、夜空に聞くみたいにして
銀河のお祭りみたいな夜更けにさえ、僕らは
夢といっしょに浴衣着て出掛けましょうよ

それでね、僕はね、君のね、手を取って
好きだと、ばかりを、どこまで行こうか
も一度、くちびるかさねてみたいような
おやすみ、僕らの、静かな、祈りよ

2009/07/06

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