酒を呑み、酔いたる酒の染み入れば
鄙(ひな)びた肌の悲しみも
ふやけたあたまのゼンマイも
伸びなくなってた爪さえも
まだしも続くと思われた
さりとて明日(あす)も明日ながら
めくるたびごと新聞も
白骨ばかりの名称を
幾つか並べてあるごとく
偉人ぶったる歯車も
命の何をか知るものぞ
せめて酒をか呑まんやと
僕は夜更けをものとせず
溺れ尽くしている始末
あんまり深くて杯(さかずき)の
記憶のきわに眠るのだ
今また悲しむこともなく
さりとて喜ぶこともなく
はるかに猫さえ鳴きますくらい
無常のこだまは安らかな
痴呆に耽っているのです
2009/07/06