ベートーヴェン 交響曲第2番 第2楽章

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交響曲第2番2楽章

Larghetto
A dur,3/8拍子

概説

 ファゴットとクラリネットの融合による主題旋律の美しいソナタ形式を使用した緩徐楽章。そしてホルンは前半E管で後半はA管に変えて演奏。ホルンの音型が限られているのはもちろんぐるぐる巻かれただけのナチュラルホルンだから仕方がないが、展開部途中の117小節から再現部直前の150小節にA管が登場する間に、長さを替える付替の管クルークを交代して次の演奏に備えるという方法を取っているたらしい。それより君、もう5月に入ってしまったじゃないか、いい加減さくさく飛ばして行きたまえ。

提示部(1-99)

第1主題提示部分(1-47)

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・弦楽4重奏なら前楽節8小節、後楽節8小節で合わせて16小節の歌謡的で自立した主題になるところ、オーケストラの効果を生かして、弦楽器による前半8小節提示の後、ホルン、ファゴット、クラリネットによる前半の繰り返し、続いて弦楽器による後半8小節の提示の後、同管楽器による後半8小節の繰り返しで、32小節までが拡大された第1主題(1-32)となる。主題前半の最後の16分音符上行パッセージが元になり16分音符の伴奏型が誕生するが、このような音が細分化していく様子に付いてもじっくり観察してみてください。さらにリズムの変化の由来とその効果、主題旋律の多様な変化とバラエティなどについて纏めてみると非常に有益です。ええ、もうこうなったら全部あなた任せですから。続いて第2主題への推移はホルンの持続音に乗せて、長さの違う付点を組み合わせた推移音型を管弦交代で進めながら(a moll)に転調。フォルテッシモの和声止めがドッペルドミナント9の根音省略で行われ、特徴的なリズムを2回繰り返すと、一瞬(e moll)を経由して(E dur)の属和音に到達し、第2主題に向かう。

第2主題提示部分(48-81)

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・上行型でのどかな叙情性を見せる第1主題に対して、リズムを変化させ下降型で幾分快活な第2主題最小構成楽句が4小節(48-51)で提示され、52小節から32分音符には細分化された第2主題の変奏が軽快さと流動性に旋律のなめらかさを持って第2楽章の愉快に花を添える。(とうとう壊れてきたな。)ここまでが第2主題前半だが、第1主題の方法とは異なり弦と管の交代の替わりにテーマとヴァリエーションの提示に変えて変化を付け、無駄な冗長を避けている。続く主題2部分後半はシンコペーションリズムによる和声的部分を経て、順次進行4音(3音ペアと次の音で)をベースにした終止カデンツに向かう動きのあるフレーズに移行し、最後に終止旋律と共にカデンツを踏む。この第2主題の締めくくりが初め弦楽器によって(55-61)、続いて途中から加わった管楽器を交えて行われるが、2回目の提示では最後のカデンツを期待するような順次進行4音のフレーズを前回の2小節半から6小節半に拡大し、カデンツの期待を高めながら次の部分に逸脱する手続きが取られているが、直前に一度カデンツをしっかり聞いているだけに、非常に効果的だ。つまりこの長く延ばされたフレーズはいったん弱くⅥ和音に終止した後はずっと(E dur)に対するⅣ和音部分を構成し、動きの止まる73小節でも終止旋律を伴った終止カデンツ(前の61小節)を踏まず、替わりにフォルテッシモでⅣ和音、続いてⅡ和音で1小節ずつ和声止めを置いて、ここまで見れば気づくだろうが、最後のカデンツの替わりに第2主題の新たなるバリエーション的な部分で7小節掛けて和声的には終止カデンツを行っている。
・というわけで、75小節から特徴的な付点リズムと32分音符の特徴的な音型を使用して最後のカデンツの仕切り直しが行われるが、第2主題に由来しながら新たに生まれた特徴的な32分音符音型が、第2主題のカデンツを見事に終止旋律への推移に変え、終止旋律を導くための呼びかけになっているという。

提示部終止部分(82-99)

・不思議と文章が伸びていくのはいつもの事だが、ここで一度管楽器が鳴りやむと、ベースと第2ヴァイオリンで終止旋律が開始、32分音符に導かれ非常に動きを持った華やかな(ただし音域的には低い位置から現われてくる)フレーズを提示する。その最後にホルンが再び入り込むと、続いて終止旋律が第1ヴァイオリンで繰り返され、クラリネットとファゴットが合わせて非常に豊かな対旋律を加えるその効果を見よ!(……今度は「草枕」の影響か?)しかし真の効果はさらに終止旋律の提示の後に待っていた。
・終止旋律最後のスタッカート分散和音によるフレーズに答えるように、ホルンが主和音上で分散和音旋律を演奏し、ヴァイオリンが次の小節それに答える、するとホルンが分散和音旋律を3連符音型に変えて演奏し、ヴァイオリンが3連符で答える。牧歌的で穏やかな木漏れ日差す自然の中で合図を告げるホルンが提示部最後を讃えて遂に鳴り渡ったような感じだ。(もう、何も突っ込むまい。)学習時代ボンのオケに在籍していたジムロックにホルンの演奏を教わったことがあるベートーヴェンだけに、さすがホルンの扱いも十全としている(って当たり前か)。ついでに脱線すると、この動機は楽曲全体に重要な役割を果たす動機ではないが、逆にその場所だけで使用されることによって重要な印象を与え、楽曲構成の重要な要因となるような動機の使用方法も作曲の常道の一つだ。例えば他では使用されない、と云うこと自体が楽曲のバランスと印象を決定する場合もある。何でもかんでも関連して沢山使われている動機だけ追い求めていれば獲物に有り付けるわけではない。そんな意味で、やはりこのホルンの印象は、楽曲の構成を引き締め印象を確定するのに大いに役に立っているだろうと思う。(ただしこの場合は楽曲構成上取り除く事が出来ないほどには重大ではないかも知れない。)すると、ベートーヴェンが提示部をE管ホルンで、再現部をA管ホルンで作曲したのは、確かに提示部第2主題グループ以降が(E dur)領域になる為に違いないのだが、このフレーズのために考え出されたのかしらとmo 思いたくなる。あれこれ思案する間に、楽曲の方は特徴的なリズムによる和声部分を越えて、ヴァイオリンの締めくくりの旋律と共に展開部を終えていた。

展開部(100-157)

 すでに大分長く伸びてきた楽曲解析だが、展開部は楽曲に影が差し第1楽章と同じ短調化の遣り方で、(a moll)で第1主題冒頭と32分音符の音階パッセージなどでお送りする4小節(100-103)が、今度は(C dur)で繰り返され明度を回復したかと思えば、続けて短調的9和音で順次進行3音を繰り返す間に(e moll)のドッペルドミナント9和音に落ち込み(113小節)、クレシェンドしてⅠの2転がフォルテになるやいなや嵐でも来そうな予感のする音階パッセージが現れる。この順次3音からパッセージまでが、今度は(F dur)に移行しながら繰り返され(117-127)、2回目のパッセージでは長調化して嵐は遠のいた。
・続いて展開部入りの第1主題冒頭と32分音符の音階パッセージなどでお送りする4小節に対応する密度の高い展開部のクライマックスが弦楽器の一定リズムによる同音反復伴奏の上下で開始するが、今度は長調から短調に移行し途中から(f moll)に入り、嵐を予感させる危機的な状況を提示する。
・しかし、やがて(c moll)のドッペルドミナント7の2転の下方変位和音で転調し、ついに第2主題後半のシンコペーションリズムを使用した和音的部分が現れると、短調の中にも黒い雲は次第に遠ざかりはじめ、リズムも消えて8分音符の同音反復と管楽器の長い和音提示に到達すると150小節で遂に長調を回復。同時にホルンが今度はA管で再登場し、(A dur)の再現部に向かう。やがてヴァイオリンには長調の分散和音上行パッセージが登場し、すっぽり明度を回復する。つまり第2楽章でも、全体の構成は[長調ー短調のドラマ的部分ー長調の回復]の構図が使用されている訳だ。

再現部(158-256)

第1主題再現部分(158-)

・もちろんただの第1主題再現ではなかった、まるで雨上がりの野原で水のしずくが日の光に一斉に反射してきらきらと輝くように、短調領域を抜けた再現部はかつての第1主題が一層きらびやかさを増し、細かい修飾音を交え繊細にして華麗なる世界を繰り広げるのである。では、その具体的な修飾については楽譜を見て貰うことにしましょう。(なんじゃそりゃ。それを説明するのが楽曲解析じゃないのか、一昔前の感想文型楽曲解析反対!)まあまあ、そのうち埋め合わせをすることもありましょうや。やはり進行は弦前半から、クラリネットとファゴットの旋律をホルンが(E)音で支える前半の繰り返しにいたり、弦による主題後半、管による主題後半と続く。さらに続く第2主題部分への推移を大幅に拡大し、使用する動機は同じだが、再度短調部分を経過させ影の差すがごとくして回復しては第2主題に参る。再現部推移では、提示部と異なり第2主題が属調に移行しないため、推移部分を引き延ばし展開させ転調を重ねて逸脱するかに見せて第2主題の主調に返るという手法がよく使われる。

第2主題再現部分(212-245)

・今度は主調(A dur)のままで。

再現部終止部分(246-263)

・同様進行で、ホルンの分散和音パッセージが(A dur)の主和音分散和音パッセージを再現する。ただし、最後のコーダに向かうヴァイオリンの推移的下降音階パッセージは主和音上ではなく属和音上で行われ、コーダの開始で主和音に入る。

コーダ(264-276)

・第1主題が1拍ごとに途切れ、フルートの分散和音上行型が1拍ごとに応答するが、3回目にフルート音型が3小節に3回(つまり三位一体を表わしたもの。・・・嘘です。)提示され、フォルテッシモの管弦総奏で幕を閉じかけるが、その上最後にピアノのこだまが2回響いて幕が閉じる。

2005/05/02
2005/06/02改訂

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