ベートーヴェン 交響曲第2番 第4楽章

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交響曲第2番4楽章

Allegro mollte
D dur,2/4拍子
ロンド形式見たようなソナタ形式(これも終楽章でお好みのパターンだ)

その前に

 この曲の音楽之友社のミニスコア最終楽章において51-60小節が1小節足りず、本来59小節目のところに60小節と記入され、以下全部間違ってますので該当スコアを持っている人は気を付けて下さい。まあ、スコアの間違いなんてどの楽譜でも大量にあるのですが、小節線が間違っているのは、ちょっと太刀(たち)が悪いので。しかも、解説の小節数がそれに合わせて間違っている上に、最後の小節数だけぴったり合っている辺り、いかにいい加減な解説が平然とスコアに取り付けられているかがよく分かる。

概説

 極めて単純な話だが、ソナタ形式の展開部の頭と、コーダの頭に第1主題を再帰させると、ソナタ形式の中にロンド形式を織り込んだ形になる。一方提示部の最後と、同時に再現部の最後に主題を再帰させても、ロンドーソナタ形式が出来上がる。どちらもベートーヴェンの大好物な作曲法の一つだ。

提示部(1-107)

第1主題提示部分(1-51)

第1主題部分(1-25)
<<<確認のためだけのへたれなmp3>>>
・第1主題は管弦総奏による跳躍とトリルの特徴的な冒頭動機x(1-2小節)と、その後に続く弦楽器だけで長く延ばされた伴奏声部の上でヴァイオリンの8分音符が軽快に動く旋律的部分(3-6小節)によって提示される。冒頭動機の開始である滑り込む2度上行型は、遠く第1楽章の序奏冒頭動機が上行化したものかもしれない。これが冒頭動機からもう一度繰り返されて、冒頭動機の頭である2度上行音とスタッカート4分音符音型の交代と、その変奏で推移してフォルテッシモの和音連打で半終止する25小節までが、第1主題部分になる。
第2主題への推移(26-51)
・主題に比べて長い音符を使用した順次進行のなめらかな推移旋律がカノン風に対位しながら管弦総奏に到達し、途中で(A dur)に転調しながら、8分音符の刻みのうちに第2主題へ向かう。

第2主題提示部分(52-83)

<<<確認のためだけのへたれなmp3>>>
・第1主題の持つ伴奏の長いフレーズと主題自体の活発な旋律の動きを交代させ精神を入れ替える事によって、和声構成音上下反復伴奏の上に、管楽器が分散和音型の長いフレーズで下降旋律を行うが、伴奏リズムは4分音符に変えられ、4小節目にヴァイオリンの特徴的な8分音符の合いの手が入る、華やかさの中にも第1主題よりは落ち着いた精神を表わしている。伴奏の分散和音上下反復も、第1主題の8分音符旋律の「落ちたかと思えば元の音より上に向かい」音型の精神から取られているようだ。主題構成最小楽句が(52-54始め)になり、これをもう一度繰り返し、展開推移から終止する第2主題部分が(52-67)までになる。続く84小節までは(a moll)に影を落とした第2主題の発展部分で83小節目に半終止すると、終止部分に続く。

提示部終止部分(84-107)

・管弦総奏のクライマックスを形成し、上下反復の伴奏音型が、4分音符の連続上行分散和音スタッカートに変化し、これに反行してヴァイオリンが第2主題に由来する分散和音下降音型を演奏している間に、一同大いに盛り上がり、フォルテッシモの同音保続の中で分散和音パッセージは上り下りしてノリノリで終止を終える。(・・・。)余力がファゴットの4分音符分散和音上行下行音型として残り、その中で弦楽器が冒頭動機x開始の短い2度上行型を何度も何度も繰り返し飛び跳ねている間に、ファゴットも消え、2度音型だけが繰り返されているところに、再び第1主題が帰ってくることになる。

展開部(107最後-184)

 楽曲の調性(D dur)で第1主題6小節が回帰すると、その繰り返しが(d moll)に変化し展開部の到来を告げる。展開部は全体として短調の激しいドラマチックな展開を見せ、単一楽章で最終楽章を取り出した場合、全体に対して展開部の比重が幾分大層に感じられもするが、つまり第1楽章で見た葛藤の精神を持ち込んで、4楽章全体でのバランスを見事に完成させたものだ。すでに祝祭的精神のこもる第4楽章の事だから、第1楽章のような葛藤の煩瑣な手続きは避けられ、提示部ではただ第2主題の後半に短調の領域が提示されているにすぎない。もっぱら展開部を短調転調のドラマとして、分かりやすい形で[祝祭的提示ー短調劇的展開ー祝祭的再現]による4楽章を作曲して、1楽章とのバランスを取る訳だ。ざっと見ていこう。
 長調と短調の第1主題の後、119小節からしばらくは冒頭動機xを使用して(d moll)の領域がフォルテで強烈に続く。131小節からは、ピアノで弦楽器を中心に、第1主題冒頭動機に続く旋律的部分によって転調を重ね、139小節から再び冒頭動機xを使用し4分音符の分散和音と絡み合わせて引き続き転調を重ね、休み無く突き進む展開部は次第にクレシェンドし、(fis moll)に到着すると、第1楽章で独立主題的になった部分と同じ遣り方で、157小節から新たな様相に結晶化された展開部主題が誕生。力強い弦楽器のユニゾンで、ついで管弦総奏で提示されクライマックスを形成する。(fis moll)部分は(157-160)を最小単位とし、これをもう一度繰り返した(157-164)までが前半。165から、第1楽章の序奏冒頭動機を彷彿とさせる第4楽章の冒頭動機の特徴的な上行2度の2音を使用して最後にカデンツを踏む170小節までが後半になるが、これをもう一度繰り返し拡大しつつ、カデンツを踏む代りに発展して再現部へ向かう。以上この(fis moll)部分が展開部のクライマックスで、その劇的な運動エネルギーは常に高く持続され、密度が高い。つまり第1楽章の悲劇的短調的な葛藤要素の最後の大反撃?とでもいうかのようだ。最後にⅠの2転上で総奏が途切れると、上行2音を提示しながらピアニッシモで和声を(D dur)の属和音に変化させ、お好みの3度調転調を行うと第1主題が再現される。

再現部(184最後-281)

第1主題再現部分(184-235)

・主題再現自体(184-209)は同様進行だが、第2主題への推移部分(210-235)が拡大され転調を重ね、最後に第2主題へ到着するという1楽章と同様の方法で(というかよくやる手法が)処理されている。

第2主題再現部分(236-267)

・調性が主調(D dur)になり途中の短調部分など提示部と同様に進行する。

再現部終止部分(268-293)

・同様進行同様進行。最後にいつもの冒頭2音上行だけ 残されて推移、やがてピアニッシモで冒頭動機x部分が2回奏されると、コーダを告げる動機xをフォルテで改めて提示し、そのまま第1主題を再現する。

コーダ(293最後-442)

 思い切りよく手を抜かせて貰いますが、第1主題の提示と、主題動機を使用した推移部分が311小節まで。続いて第2主題への推移で登場した推移旋律を使用した部分が337小節まで。和声的推移に冒頭2音が絡み合うような部分が373小節まで。動機由来のある8分音符が走り回って居るうちにフォルテッシモの管弦総奏でコーダのクライマックスを築く401小節まで。しかしまだ強烈な余韻が残っているため、再度冒頭動機xを使用した部分が開始し盛り上がりを見せ415小節のフォルテッシモで長く止められると、それでもまだ流れを止める事が出来ずピアニッシモで楽曲が再始動し、また上行2音が入り込むと、我慢できなくなってきた冒頭動機xがフォルテッシモで打ち鳴らされ、分散和音と8分音符の音階パッセージを駆使して真の終止的祝祭を管弦総奏で繰り広げて大団円を迎える。以上。

2005/05/04
2005/06/02改訂

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