ベートーヴェン 交響曲第4番 第1楽章

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交響曲第4番1楽章

Adagio-Allegro vivace
b moll→B dur,4/4→2/2

序奏部ーAdagio(1-38)

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・下行分散和音型の前半(1-5)と上行分散和音型の後半(6-12)による序奏主題が(b moll)で開始され、それがもう一度繰り返される途中から(h moll)に転調(13-24)する。続いて主題後半の動機を元にした推移(25-31)の後、終止旋律を形成し(32-35)、そのまま(B dur)の属和音に至ると、第1主題の冒頭導入動機Dをアダージョのまま開始する。

提示部(39-198)

第1主題A提示部分(39-106)

第1主題A提示(39-64)
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・2音から5音の滑走が繰り返し繰り返しB音に到達する開始の合図が、Allegro vivaceで速度を速めた冒頭導入動機Dとして4小節に渡り確認され第1主題へとなだれ込むが、これはすでに第3番で試みた冒頭動機の扱いをかみ砕いたものである。続いて弦楽器による分散和音下行形(43-46)と管楽器の応答である音階的下行形(47-50)が組み合わさった第1主題A(43-50)が8小節で開始するが、これは序奏主題とぼんやりとした関連性を保っている。つまり序奏(1-5)の弦楽器による分散和音型が主題Aの純粋分散和音(43,44)に、序奏の弦楽器による分散和音型前半(6-11)の音型に対してはその逆行形が意識されているような(45,46)小節に、さらに序奏で管楽器の応答が行なわれる(12)はが第1主題Aの(46-)にそこはかとなく類似して作曲されている。ひるがえって主題から導き出された短い序奏という意図が見て取れるだろう。続いて2小節の導入動機Dを行ない管弦総奏による第1主題Aが強調確認され、最後に4小節のカデンツ置いて合計2回の主題Aを持って第1主題提示を終える。

第1主題提示部分推移(65-80)
・主題Aを元にした分散和音と、ヴァイオリンのトリル風の組み合わせによる推移は、単純ながら新鮮で活気に満ちた瑞々しさを持っているが、この推移は、再度第1主題Aを確認して第1主題部分を閉じるまでの推移で、第1主題部分だけで閉じて考えれば中間推移になる。この場合(A-A-推移-A')で綺麗な2部形式になり、この4番の1楽章は実は非常に強固な楽曲構成法の上に成り立っている。もちろん同時に第1主題提示部分はソナタ形式内で開始を告げる部分であるため、実際のA'の部分は楽曲終止型ではなく、展開の始まりを告げるべく逸脱を開始する部分になる。

第1主題前半展開形(81-94)
・第1主題Aの前半部分だけが刻みを細かくして2回続けて確認され、第1主題提示部分内での主題再確認を行なうと同時に第2主題へ向けた推移を開始、主題の音型を使用しながら(d moll)を経て(f moll)に転調する。

第2主題への推移(95-106)
・(f moll)を強調確認するようにシンコペーションによる和音的音型が始め管楽器だけで、続いて管弦総奏されると、第2主題への導入を果たす旋律的パッセージがヴィオラとチェロで(F dur)に転調して開始され、第2主題へ移行する。なお、推移部分途中の98小節と102小節ではドッペルドミナント根音省略形の3転からいきなり属和音基本形に至る和声進行があるが、和声の例外進行の例として最適である。

第2主題提示部分(107-140)

第2主題B提示(107-120)F dur
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・第2主題Bの最小細胞である開始の2小節は、第1主題前半の分散和音音型を1/2音価にしたような8分音符の開始動機と、第1主題A後半の下行音型を反転させて形成したような音階上行形が組み合わさっていて、第1主題Aの精神に幾らかの反駁を込めて形成されているようだ。この最小細胞がファゴット→オーボエ→フルートと引き継がれ3回繰り返され、3回目に(d moll)に転調するまで、合計6小節が第2主題Bの前半部分となる。対して後半は付点2分音符に特徴付けられたなだらかな下行音型が4小節、その4小節の発展形が4小節で合計8小節。合わせて14小節を持って第2主題Bが形成されている。

推移(121-134)
・第1主題で遣ったように、第2主題部分だけを切り取って考えてみると、今度は(主題前半ー主題後半ー推移ー主題後半に基づく終止)と一層コンパクトな楽曲になっていることが分る。その第2主題B内の推移としてこの部分は、2分音符の和音だけで形成され、(d moll)から(F dur)に転調すると(F dur)の和音を1度づつ上行しながら、最後に属7の和音に到達する。

第2主題B終止(135-140)F dur
・第2主題Bの後半付点2分音符を使用して終止旋律を形成し、それを半分の音価にしてもう一度繰り返すと、そのまま提示部終止に移行する。

提示部終止部分(141-198)

終止旋律S提示(141-156)F dur
・1小節ごとに付点2分音符を折り込んだ終止旋律Sが、順次音階的進行に分散和音的跳躍をブレンドして8小節に渡る幅広く山なりの旋律線を描く。これはクラリネットで開始され、1小節遅れて直ちにファゴットが追いかけるカノンを形成、2声で1回目の提示を終えると、続いてフルートとヴァイオリンが再度終止旋律Sを開始し、ヴィオラとベースが1小節遅れて声部を厚くしたカノンで繰り返す。

終止旋律終止と推移(157-176)F dur
・終止旋律Sの最後の音型によって2小節推移すると、弦の同音刻みがピアニッシモで奏され、フォルテッシモの和音カデンツにより終止旋律Sの締め括りに掛かる。しかし終了にはもの足りずもう一度刻みと和音カデンツを繰り返すと、まだ至らず弦の刻みが管弦総奏のフォルテによる刻みに拡大され、終止部分終止に到達。これを持って完全に提示部分を終える。

終止部分終止(177-186)
・フォルテでシンコペーションリズムに特徴付けられた最後の終止形が行なわれ提示部分を終える。その後1回目は再び導入序奏Dが開始して第1主題のリピートに向かうが、2回目はシンコペーションリズムから、直ちに展開部の第1主題冒頭音型が現われる。

展開部(187-336)

第1の部分(187-216)F dur→D dur

・管楽器が和音構成音を長く引き延ばす中で、弦楽器が第1主題冒頭2小節の動機を元にして導入動機Dの入りを交えながら何度も提示されるが、やがて導入動機Dの4音滑走と主題冒頭が断片化してただの分散和音化したものだけが残り、ヴァイオリンとチェロだけの薄い声部書法で推移する。

第2の部分(217-240)D dur→g moll→Es dur

・直前にフルートが導入され、217小節目から第1主題A冒頭4小節が奏されると、それがファゴットで繰り返されると同時に、ヴァイオリンとチェロに息の長い対旋律が登場する。これはまったく新しい旋律で、第1主題と絡み合ってはいるものの、同時期の交響曲である3番1楽章の中間部の遣り方と親しい関係にあるように思われる。この対旋律のお陰で、この場面が新しい情景として非常に新鮮に響くが、心憎いことに、この主旋律と対旋律の2重奏は、まず(D dur)で、続いて印象を大きく変えて(g moll)で繰り返されると、3回目の(Es dur)での提示では、主旋律の方がただの分散和音と化し、対主題が主題として躍り出るかのよう。この後もう一度(Es dur)による主題と対主題の絡みと、主題の消えた対主題だけの部分を繰り返すと、第1主題Aの冒頭を使用したまま、更に新しい場面に変化する。第1主題属性が続いていると同時に、異なる印象を与えていて非常に効果的だ。

第3の部分(241-280)

・今度は第1主題A冒頭1小節目だけを4回連続下降させて誕生させた分散和音に乗せて、その上に同音保続的な導入動機Dによるパッセージが絡み合う4小節と、弦楽器で分散和音が途切れがちに繰り返される4小節をペアにした8小節が、まず(Es dur)で、続いて(C dur)で、さらに短調に転調して(f moll)で行なわれると、最後の薄い分散和音を繰り返しながら推移、途中で異名同音転調により(H dur)に転調する。

第4の部分(281-336)

・分散和音も鳴り止み、ピアニッシモアッサイで再度導入動機Dの4音滑走が開始されると、ティンパニが単独でひそひそ轟くというのが2回繰り返すと、第1主題A後半順次下降が展開部において初めて顔を出し、再現部の期待を膨らませる。この順次下降音型を使用した部分をしばらく経過すると、ついに鳴り止まなくなったひそひそ声のティンパニの上で導入動機Dが何度も何度も上に向かって飛び跳ねようとする水遊びのような場面で次第にクレシェンドし、フォルテッシモで第1主題が再現される。

再現部(337-460)

第1主題再現部分(337-384)

・大きく圧縮して密度を高めている。まず提示部が第1主題全体を2回繰り返して確認を取ったのに対して、再現ではそのような煩瑣な手続きは不要となり、第1主題Aの前半だけを2回やっておいて、後半1回に繋げて纏めて1回の第1主題再現とする。さらに提示部分に見られた推移まで止めにして、変わりに2小節ほどのつなぎを入れるとすぐさま主題前半を再度確認し、提示部同様その最後の音型を使用しながら推移を開始。再現部ではこの推移部分だけが反対に大きく拡大されて、提示部での(d moll)→(f moll)に対して、(B dur)→(C dur)→(Es dur)→(F dur)→(g moll)→(As dur)→(B dur)→(b moll)と驚くべき転調を迎えることになる。こうして提示部でのA-A-B-A'的な第1主題部分は完全に別の構成に置き換えられて、展開部を通過した後の再現部が第1主題の持つ意味を別のものに変えようとした様を見事に映し出している。

第2主題再現部分+終止部分

・以下は第2主題が主調(B dur)で再現するぐらいで、そうそう細かく見ていた日には己の生命が黄昏れてしまう。(すでに半ば黄昏れているようなものだ。)

コーダ(461-498)

 再度、冒頭のように導入動機Dが連続的に導入され終わりの始まりを告げると、第1主題前半を元に変化させた分散和音型4小節が2回と、第1主題後半の下行音型を元にした4小節が2回演奏され、第1主題の最終確認を思う存分に楽しんだ後、導入動機Dがお別れ動機として楽曲を讃えながらフォルテッシモで曲を終える。

2005/02/01
2005/02/25改訂

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