ベートーヴェン 交響曲第6番 2楽章

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概説

標題「小さな川沿いの景色」
ソナタ形式
B dur、8/12拍子
Andante molto moto

・ソナタ形式とは言っても、第1主題と第2主題が対比的に扱われ、それぞれの部分がはっきりと性格の違いを持っているようなソナタアレグロ形式的な遣り方ではない。歌謡的で自立した第1主題の断続的な前半部分(1-4)と、旋律的な後半部分(5-6)の2つを元に、緩やかに生成変化させながら作曲された緩徐楽章。

提示部(1-53)

第1主題提示部(1-27)

①第1主題A提示(1-6)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・幾分断片的な主題A前半がヴァイオリンで提示され、弦の伴奏とホルンがその主旋律を下で支える。前半の断片的主題部分は長い休符を挟みながら進行するが、1小節目後半の(休ーたたたた)のリズムを元にして作られている。このリズム音型を音符のある形に置き換えた、(たーたたたた)を動機Xとしておこう。
・一方伴奏形は8分音符で開始されるが、第1主題提示の後半5小節目から16分音符の分散和音的同音程上下を繰り返す伴奏に変化し、以降この楽章はその伴奏に載って穏やかな調子で進む。第1主題の開始部分は、その16分音符の伴奏の派生前の姿として翻って8分音符の和音的伴奏で提示され、同時に主題対旋律としての動機を分かりやすく示している。この伴奏動機をz(FFGFFEbDDCBbBb)としよう。
・主題後半の旋律的な部分A'は動機zから派生した1小節と、zの逆行形が考慮された1小節の合わせて2小節で形成され、伴奏形が2楽章全体の伴奏リズムとして16分音符に派生するのもこの部分からである。もうすこし具体的に言うと、伴奏動機Zが初めて登場する前にはBbの音があって、それがFに跳躍して動機Zが開始するのだが、その後の動機Zの主要な音を辿ると(FEbDCBb)の音階が取り出せる。この出だしを考慮に入れて、Bbからの冒頭の跳躍上行の替わりに、旋律的(CDE)を配置、さらに(FEbDCH)を元に主題後半部分A'の開始旋律が成立して、後半は(F→Bb)の進行が上行形に変えられて模索されている。この(F→Bb、あるいはBb→F)の模索は、まさに主題冒頭Bbがとぎれがちで、ためらいながら5小節冒頭の到達点Fを目指しているのと同様であり、翻って第1主題全体を考えると、(BbCDEbF)(FEbDCBb)(FGABb)(BbAGF)のFとBbを行き来する音階が基本的なコンセプトとして流れていることを発見する。
・(再度まとめる時には、A'部分から動機Yを取り出して、XYZで書き直す。)

②第1主題の変化を付けた繰り返し(7-12)
・主題に対して対旋律に長いトリルを持った音型がヴァイオリンで入って、そのトリル音型の下で第1主題が、今度はクラリネットとファゴットのユニゾンによって引き継がれて歌われていく。すでに第1主題の提示にも小鳥の鳴き声のような調子があるのだが、これ以降この囀るようなトリル音型が効果的に使用され、最後の鳥の鳴き声を真似したカデンツまで続いていくことになる。

③終止句(13-17)
・第1主題後半のA'を元に作られた終止パッセージ。

④第1主題を使った第2主題への推移(18-26)
・和音連打と分散和音によって、それまでの伴奏パターンに対して、曲の進行を一端止め再度次ぎを導入するような音型を入れ、再び第1主題が提示される。第1主題はやがて変形され転調をしながら、推移的に第2主題へと向かう。

第2主題提示部(27-32)

・この楽章では、第2主題Bをどこに置くかで悩むことになる。属調転調の後に新たな旋律形が出てくる27小節からだとすると、実際後半を担う後半の主要旋律33小節以降との関係や、伴奏形が変化する30,32小節に対して主題内で性格が変化してしまう問題などがあって、適切な前後関係を築くことが出来ないように思えてくる。27小節からの旋律形を離脱的に考えて、30小節からの第2主題が1小節の離脱部分の音型を挟んで40小節まで続いているという考え方も出来る。これは33小節からの旋律形がそれ自身応答的かつ推移的にも感じられ、しかも33小節の伴奏形の開始は実際30小節目に開始されていることから、33小節の旋律は30小節目の旋律形の応答であるという考え方である。しかし、これに対しては30-32小節の旋律形はまだ第1主題Aの性格を引きずっているように感じられ、次の小節から旋律がなだらかな上行主体に変化して新しい旋律パターンが現われることから見ても、第2主題は33小節から開始するべきだとする考えの方が優位かもしれない。例えば全音スコアに付いている諸井三郎解説では、33小節から40小節を第2主題としているが、それはこの部分が第1主題に対応する十分な長さを持った旋律で、8小節の大楽節から形成され終止を打つことを重視しているのだと思われる。実際に聞いていても提示部(および再現部の)主題Aに対応する後半部分としては、一番この部分が長く演奏され主要な意味を持っている。これに対して音楽之友社のスコアを見ると門馬直衛解説が27小節以下を第2主題とし、文章から見るとその後の33小節以下もまた第2主題にしている。これは旋律、動機から見た時無頓着な括りだが、おそらくソナタ・アレグロ形式のように明確に提示可能な第2主題を抜き出すことは出来ないので、属調部分といった意味で軽く分類しているだけだろうと思われる。また、別の解説では27-28小節の旋律が第2主題であるとしてある。これはもちろん第2主題の提示部では属調で、再現部では主調のまま提示されるという、ソナタ形式から判断して、かつ曖昧ではなく一つの旋律型で小節数を区切った見方である。しかし、この場合実際には、提示部を大きく分けると第1主題的前半に所属するだろう27-28小節が第2主題となり、異なった旋律を主体とする後半部分すべてが終止的推移部分となって、幾分現実を見ないでソナタ形式を定義しているような気がしてくる。そして、この緩除楽章の形式を規定し、緩除楽章にプロセス面で決定的な作用を及ぼしているのは、周辺事象的な最後の鳥のカデンツやら、提示部分で一端立ち止まり開始される第1主題やら、さらに本来重要な展開部分でもなく、まさにこの部分なのである。この解釈の付きにくい第2主題こそが、この緩除楽章のキーワードなのだと言える。(あーあ、また無責任なことを。)
・もう疲れたので、先を大急ぎで進めると、実際の作曲のプロセスがどうなっていたのかは分らないが、この第2主題は次のように定義できる。多分出来ると思う。出来るんじゃないかな。まあ、ちょっと、覚悟はしておけ。
・この提示部は、第1主題に当たる前半部分と、33小節以下の旋律に基づく後半旋律による部分を、ソナタ形式の第2主題に当たる部分によって接続したものである。ソナタアレグロ形式で一番一般的な形としてある第2主題は、それ自体後半部分の一番主要な旋律であり、一つの属性で括られる旋律型や伴奏などに規定された比較的自立した一つの部分である。しかしベートーヴェンは、この緩除楽章において、第2主題を後半旋律への移行として使用することを考えた。これによって第2主題部分は推移的な要素を持ち、比較的短い属性の異なる部分で構成され、しかも本来の第2主題のように、第1主題に次いで重要な意味を持っている。後半旋律が長い旋律的部分でしっかりした終止カデンツまで持っているのに、幾分推移的で終止的に聞こえるのは、この第2主題の意味を高めるためにそう作曲されているからである。あるいは、この後半旋律が幾分推移的であったために、逆にこのような第2主題が生まれたのかもしれない。
・今述べたような意味を持っている第2主題は、属性の統一した旋律的に区切れる第2主題を切り出すことは出来ない。3つの要素を持つ部分で構成された、同時に接続を兼ねた一つの部分が27-32小節の第2主題部分なのである。更に細かく見てみると。

①第1主題の属性を持つ部分(27-28)
・推移部分で第1主題が繰り返され、(F dur)に転調しながら新しい部分を模索する4音上行パッセージが3回目に第2主題部分に到達し、新たな旋律を奏で始める。伴奏形は第1主題のままで、対比は無く連続的で、属性的には第1主題を引き継いでいるが、これまで4度か5度を模索していることの多かった旋律が、大きく波打って13度下降して、13度上行する。同時に第1主題による推移部分(18から)を考える時、第1主題の展開的変奏が行われたと考えれば、この部分が旋律的部分A'の替わりに展開された部分になる。ただし音の上下進行は大きくA'に基づいているが、同時にリズム的には冒頭の断片的主題Xから取られている。

②属音上の完全に推移的な部分(29)
・27-28小節の大きな波のような旋律のうねり自体を抽象化して提示したようなパッセージは、第1主題の伴奏形を使用しているが、今までに全くなかった新しい状況を感じさせ、第1主題の属性から離脱する。

③後半旋律である、終止主題の導入部分(30)
・ここで伴奏形が変化し、終止主題と同じ伴奏形になる。ここから後半部分の属性に変化。フルートが第1主題の後半旋律的部分A'を思わせるような、連続的な旋律を演奏する。同時に、終止主題はこの旋律に応答する形で開始されている。ここで先ほどの27-28よりももっとA'部分を思わせるような旋律が出てきたことで、更に新しい事実に気が付く。先ほどの27-28、さらに29ともリズム的には第1主題の冒頭断片側に所属していて、この30の部分で初めて8分音符による連続的旋律としてA'に接近した部分が登場する。つまり、18から第1主題が推移的に再登場していたのは、実は、第1主題の拡大展開変奏の開始であって、この30小節以降の部分は展開変奏された第1主題後半部分A'なのだと見ることも出来るのではないだろうか。大枠としてそのような意識があったらしいことは、第1主題が一端終止した後で、同音和音連打によって改めて開始されているところから見て取ることが出来る。
・つまり、この第2楽章の背後には第1主題に基づく変奏曲という意味合いが流れていて、冒頭18までの第1主題提示、その後完全に背景としての第1主題拡大展開変奏から、展開部の第1主題を主体とする変奏的展開をへて、再現部の第1主題はまた新しい変奏になっている。こうしてみると、なぜ第1主題が一度終止して、完全に新たに開始しなければならなかったのか、展開部がなぜもっぱら第1主題で構成されているのか、そして再現部ではなぜ第1主題が直ちに第1主題拡大展開変奏部分に流れ込んでいくのかなどが、変奏的構成を意識して作曲された構成法として理解できる。
・もちろんこの変奏的な理念はバックボーンに過ぎない。提示部と再現部の終止旋律はそれ自体、前半に対して後半を形成する長い旋律だし、先ほど見たように同時に接続から派生したような第2主題も、それ自体が重要な意味合いを持っていて、一括りには出来ないものである。
・つまりこの提示・再現部では、第1主題と後半主題の2つの部分から作曲された提示・再現部という意味と、2つを繋ぐ接続から派生して自身重要な意味を持った第2主題的部分、そして背後に流れる変奏曲的な意味合い、それらが提示部・展開部・再現部からなるソナタ形式の枠の中で高次に絡み合って、聞いている人達に常に新鮮な驚きを与え続けるので、私達は飽きるどころかこの穏やかに流れる第2楽章に、絶えず引きつけられるのである。

②③をもう一度繰り返す。
・③の旋律部分は今度はフルートからファゴットに引き継がれて、そのまま終止主題に入っていくため、実際はこの小節(32)は終止提示部分に掛かっている。同時に終止主題はこの第2主題最後のフレーズに対して、応答するように作成されているから、終止提示部はやはり33小節からである。だんだんしんどくなってきた。終止提示部は区分けだけにしましょう。

終止提示部(33-53)
①終止主題提示(33-40)
②その繰り返し(41-47)
③終止句(48-53)

さらに考えを挟む

・ここまで考えて、改めて曲を聴いてみると、初めの閉じられた第1主題提示部分の1-17小節が、より一層変奏曲における主題提示のような意味合いを持っているように感じられる。そして、先ほど第2主題にしてしまった冒頭27小節の部分が、ますます第1主題の後半部分Yが展開的変奏された、調性以外は明確に第1主題のように聞こえてきた。先ほど、第1主題ー終止主題を繋ぐ意味を込めた第2主題の成立について意気揚々と語っていたはずだが、再度聴いてみると、33小節からの旋律の方が調性以外では27小節からよりも遙かに重要な旋律に感じられる。こじつけを止めて33小節以降を第2主題と再定義した方がずっとうまく行くようじゃないか。実は初めの頃は、33小節以下の旋律が大分推移的に感じられ、同時に19小節以下を第1主題を使った推移から調性的に第2主題の現われる27小節で次の部分に到達するように感じていたので、いろいろ考えていたのだが、一度変奏的な意味合いと言うことに気が付いてからは、自然に19小節から28小節までが、第1主題の展開的変奏に聞こえるようになってしまった。そのあと4小節の第1主題と関わりのある推移的部分を経て、33小節からの第2主題に入っていくのである。確かに第2主題は幾分推移的だが、何度か口ずさんでいる間に、27小節部分よりは自立的にはっきりとした別の性格を持って聞こえてくる。(なかなかそこに到達しない耳の悪さに乾杯)この際、調性よりも遙かに楽曲全体の属性の変化の方が際だって聞こえるように思える。耳が乏しいとなかなか大きな楽曲を把握するのに苦労が絶えない。
・さらに以前の考えでは、再現部では第1主題の自立的な提示部分が無くなって、1回目に変奏的に提示された第1主題が、2回目に短縮されて直ちに第2主題と考えていた旋律に到達してしまうことになる。この考えだと、再現部内での楽曲の長さもインパクトも終止主題としていた部分の方が、ますます重要になってしまうので言葉の定義でもこじ付けが必要だったが、何のことはない、その終止主題を第2主題とすれば、何もかもがすっぽりうまくいく。私は何だってこんなにさ迷い歩いていたのだろう。
・ここで改めて、第1主題と終止主題を繋ぐ接続の意味を担った、第2主題と言うことに立ち返ると、この提示部で(F dur)で本来第2主題の提示される部分で、自分が何故3つの部分を第2主題としてしまったのかの意味が分ってくる。つまり確かにこの部分は本当の第2主題である33小節以下と、第1主題を接続すると同時に、明確にソナタ形式の第2主題部分の意味合いを込めて作曲されている。特に調性的には完全にこの部分を第2主題と定義しても可笑しくないほどで、現に先ほど上げた解説でもそのような定義がなされている。しかし、この部分は、第1主題を推移的意味合いも折り込んで拡大変奏させた第1主題後半部分A'から派生したものだったである。つまり、この27小節からの、先ほど3つに分けたそれぞれの部分は、もともと全体が第1主題側から派生して誕生した、第1主題の変奏と、停滞的推移パッセージ、次の第2主題へ向かう推移パッセージからなり、同時に作曲者の頭の中でソナタ形式の第2主題部分の意味合いが込められた擬似的第2主題登場部分とでも呼びたくなるような部分を形成している。簡単に言うと、本来考えられた第2主題の前に、第2主題的な部分を折り込むという離れ業が行われていると言えるのかもしれない。ここまで書いて改めて初めから読み直して、纏めて1つの新しい解説にするのが正解だが、どうも時間切れのようなので、取りあえず大きな区分けだけでもして、先を急ぎましょう。

提示部(1-53)

第1主題提示部(1-18)

第1主題展開的変奏と推移(19-32)

・ただし同時に擬似的な第2主題部分の意味合いを持つ(27-32)は一つの纏まりを形成し、また属性上第2主題に結びつけられる32小節は第2主題部分と1つの纏まりを形成しているため、実際の音楽に近づきたい方は、小節で分類する悪い癖を取り払うおまじないを唱えてください。「めだはぽっらか」と3回唱えましょう。

擬似的第2主題提示部分(27-32)

・おまじないを唱えた後で、擬似的第2主題部分を表わしてみる。27-28小節は明確に第1主題の展開的変奏の続きであり、30と32小節は第2主題への呼びかけであり、伴奏形がここで変化するのを見ても、属性上は第2主題部分と言える。しかし、何度も書き記したように、この旋律は幾分主題Aの後半部分の意味を持って、同時により強く第2主題の属性に所属しているのである。ますます、その後の主題を第2主題としたくなるじゃないか。さらに29と31小節は、前半旋律と後半旋律を分けて、これから新しい事象が起きることを告げるような役割も果たしている。・・・ような気がする。

第2主題提示部(33-49)

<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・あらためて、33小節以下の主題に耳を通すと、第2主題が第1主題提示部と対応して2回繰り返されて、その後に終止フレーズまで付いているのが分る。なんだ、やっぱりこれが第2主題じゃないか、私の耳はどうかしているんじゃないだろうか。しかし、同時に思うのである。私だけでなく、いくつもの解説だって、私の知人だって、皆同じ所で第2主題だと考えていると言うことは、作曲家の戦略が高次なレベルで成功しているに違いない。擬似的に差し込まれた第2主題的部分が完全に機能している時、もはや、その部分は第2主題ではないとは言い切れないのである。(疲れて、妄想的傾向が現われてきたか?)実際、その部分は調性的にはよりいっそう第2主題的である。ここで、私より遙かに優れた耳を持つ、私の音楽の教師が、初めから27小節の部分を第2主題と定義することに難色を示したのも、この33小節以下の部分を第2主題とすることの証拠の一つに上げられるかもしれない。今まで温かく見守ってくださった、第2主題お宝発掘隊の皆様にも心から感謝する。そして最後に第2主題を血眼で探し回り朝も昼も大声で楽曲を歌いまくった狂気の夫を支えてくれた妻に心から感謝を送る。(ああ、だんだん疲れて訳が分からなくなってきた。)

終止部(50-53)

展開部(54-90)

・もう時間切れです。分類だけで飛ばしていきましょう。

①推移(54-57)

②第1主題の変奏1(58-68)
・オーボエの主題とフルートの対旋律とが絡み合う2重唱が伴奏に乗って奏され、後半は2つの楽器が同じフレーズを交互に繰り返して木管室内楽的な2重奏のよう。

③第1主題の変奏2(69-78)
・今度は前半ビオラが対旋律の合いの手を入れるものの後半破棄され、クラリネットによるソロの主題提示のよう。

④第1主題の変奏3の途中から再現部へ向けた推移(79-90)
・ヴァイオリンで主題が提示されるが、今度は対旋律として木管楽器群が伴奏動機Zを8分音符の一番最初に現われた形で提示、印象を大きく変えて登場させている。この効果的な遣り方は展開部最後まで取って置かれたもの(reserveされたもの)である。この非常に緩やかな山の頂のようなクライマックスを抜けて、(B dur)の属音上の推移へと入っていく。

再現部(91-)

第1主題再現部(91-98)

①第1主題再現(91-96)
・フルートによる主題が提示され、分散和音上行パッセージが楽器を変えて主題を修飾する非常に美しい主題再現部。

②第1主題展開的変奏と推移(97-104)
・提示部に対して第1主題展開的変奏部分の前半が1/2に短縮されている。このことはむしろ擬似的第2主題部分の力を弱めて、かえって真の第2主題に向かう推移的な意味合いを強めているように思われる。擬似的第2主題がもし真正第2主題だったとしたら、別の作曲方法が採用されただろう。擬似的第2主題再現部分(99-104)はソナタ形式の形通り主調(B dur)になっている。(まあ、なっているから擬似的なんたら部分にしたわけだけど。)

第2主題再現部(105-124)

①第2主題再現(105-102)
・主題を修飾して囀るヴァイオリンによる小鳥達のトリルが、提示部分のトリル(4分音符分)に対して、より短く(8分音符分)スタッカートのような効果を出してより華やいでいるようだ。詳しく曲の作りを見る人には、提示部再現部とも第2主題の繰り返しの部分ではトリルの修飾の替わりに、別の修飾がなされている様子を細かく観察して欲しい気がする今日この頃。

②その繰り返し(103-119)

③終止句(119後半-121)

終止再現部(122-124)

コーダ(125-139)

①Ⅳ度調転調部分(125-128)
・ただⅣ度調に転調するだけで、これほど効果的な印象を与えることが出来る。単純明快にして効果的な用法を要所要所まで使わないで取っておくreserveの遣り方には、Academia reservataとしても言及しないわけにはいかないのである。

②小鳥のさえずり(代替ソロカデンツ)と終止(129-139)
・フルート(夜鳴きうぐいす)、オーボエ(うずら)、クラリネット(ほととぎす)による。今回の6番2楽章は今までで一番時間が掛かってしまった。その分、文章までまとまり悪く脱線しているかもしれないね。

2004/7/19

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