ベートーヴェン 交響曲第6番 3楽章

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概説

標題「農民達の楽しい集い(大根チェルト)」
ほとんどスケルツォのような複合3部形式
F dur、3/4拍子
Allegro

 金管の無い、すなわち軍隊的でないおどけた舞踏風楽曲は農民たちの大根チェルトにふさわしい。大王はまたしても、木管楽器だけでこの楽章を開始した。しかし、音楽が盛り上がるとうっかり覗き込んだ軍隊のはぐれ兵士が、手に持っていたトランペットを吹き鳴らし、大根チェルトはピークに達するのだった。

A部分(1-90) F dur

・管弦の伴奏に乗せて農民達が楽しく踊っているような感じ。

主題Aの提示部分(1-32)

①主題A(1-16)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
1.動機的主題X(1-8)F dur
・主題Yを旋律的真正主題とすればその後半部分から取られた動機的、舞踏伴奏的な主題が、弦だけのユニゾンで開始される。後半Ⅵ和音に入って、同主長調の(D dur)のⅠに転調する。

2.舞踏旋律的主題Y(9-16)D dur
・(D dur)に入り主旋律がフルートで開始され、和音構成音を元にした陽気な主題Yが保続主和音上に繰り広げられる。その後半部分の動機は、主題Xと重なり合う。
②主題Aの繰り返し(17-32)

主題Aの展開部分(33-90)

①転調して主題Aの繰り返し(33-47)
・X部分で(D dur)から(C dur)に転調し、(C dur)の主音上でY旋律が奏でられる。提示部分ではフルート(とヴァイオリン)によって奏されていた旋律が、今度はオーボエで登場。初めてホルンも参加して、調性変化と共に印象を変える。

②Xに基づく終止部(48-74)
・そのままYの後半が繰り返され、ユニゾンの見本のような管弦総奏によるX部分に入り、それに応答する和声的終止パッセージが2回繰り返され和声カデンツを形成すると、直ちにB部分の伴奏型が木管に入り込み、Bに向かって推移する。

③B部分の伴奏型の混入した終止から推移へ(75-90)

B部分(91-164) F dur

・農民は踊りを止め、危なっかしい木管楽器奏者達の室内楽に耳を傾ける。

主題Bの提示部分(91-122)

①主題B(91-98)
<<<確認のためだけの下手なmp3>>>
・(F dur)の主和音を奏でる弦楽器の伴奏者達に対して、先陣を切るのは幾分危なっかしいオーボエ奏者。簡単な伴奏に対して、1拍遅れて開始される酔っぱらい気味の旋律は、拍がずれた結果か、それとも長く伸ばす音符を間違っているのか、3拍目を強調して次の一拍までシンコペーションで引き延ばされながら開始される。しかし、後半ファゴットがバス音を合の手で入れると、漸く正しいリズム位置に納まることが出来た。主題は自然と思われる旋律に対して故意に間違った方向にずれながら、意気揚々と何の技巧もなく提示されるため、私たちは田舎の農民達が集う生粋のアマチュアムージクムに思いをはせることになる。ここでは実際に駄目な旋律を使用するのではなく、故意にはぐらかされてはいるが、決してアマチュアの集いからは生まれそうもない、人工的で実は考え抜かれた旋律が使用されているため、私たちはその部分で作品の質を損なうことがない。たった8小節の和音構成音だらけの旋律でそんな大げさな、と思う方は、伴奏を弾きながら何回も歌ってみると良い。簡単な旋律だからこそ、ついうっかり気づいてしまってビックリするに違いないから。

②主題Bの応答(99-106)
・主題Bの後半が変化してファゴットのバスの助けを借りて、完全に終止。(91-106)で一つの主題B部分を形作る。

③この主題B部分を、もう一度繰り返すが、演奏に自身のあるクラリネットが我慢できないで、2回ほど合いの手を入れる。(107-122)

主題Bの展開部分(123-161)

・オーボエに合の手を捧げてきたファゴットとクラリネットが、もっとましな手本を見せようといきなり(C dur)で登場。ファゴットは弦の伴奏を引き継いで、オーボエ奏者の愉快な主題Bを元に展開を始める。クラリネットは主題の後半に幾分技巧的な(彼らの中では)パッセージまで織り込んで自信満々である。割り込みに驚いて手を休めていた弦楽器達も、後半ファゴットがやってくれていたのを思い出して、バスラインの一拍目に合いの手を入れる。(123-132)

・やんちゃ者のクラリネットを見て笑っていたホルン奏者が、特に気負いもなく自分に与えられたソロを、(F dur)に主題Bを引き継いで演奏すると、弦楽器達も一斉に伴奏を再開して、各楽器が掛け合いをしながら全員で演奏をエンジョイし、いつになく盛り上がってしまった。(133-161)

③Cへの推移(162-164)

・言葉で言うなら、「そして」に当たる部分。

C部分(165) B dur

・我を忘れて楽しい演奏に見入っていた他の農民達も、だんだん我慢できなくなってきて、とうとう楽器奏者と農民達が全員一斉に踊り出す大根チェルト(羽目を外した大コンチェルト状態)を満喫。曲は2/2拍子に替わり、中間部調性(B dur)の属和音で開始。後半に至ると皆そろっての飛び跳ね状態に陥ってにっちもさっちもいかなくなってしまった。知人の解説によると、この部分で椅子投げが開始されて、紅白入り乱れて収拾がつかなくなるらしい。

主題Cの提示部分(165-180)

①主題C(165-168)
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・第1楽章冒頭2小節目のリズムと、同じく提示部終止に見られた4度関係にある2つの音の連続(4分音符C-Gの繰り返し)から着想を得た前半2小節に基づく、弦楽器による4小節の主題。前が(F dur)であるため、その冒頭2小節は当然(F dur)に聞こえ、次の(E)音が(Eb)で登場するところが、まるで(F)を中心音とするミクソリディア旋法のように聞こえる。従って(B dur)とは言っても(F dur)がⅣ度調を模索しているようにも聞こえ、その曖昧さは、Ⅰ度とⅣ度の交替の目に付く第1楽章第1主題部分を見ても分るように、パストラーレ的な音楽に相応しい。(それは舞踏音楽にもまた)

②その繰り返し(173-180)
・この主題Cがもう一度繰り返され、フルートの3連符修飾を伴ってさらに2回繰り返される。

主題Cの展開部分(181-204)

・(F dur)に転調して主題がファゴットで更に2回繰り返されるが、近くを通りかかった軍楽隊の兵士が我慢できなくなってついにはトランペットで飛び入り参加。6番で初めて金管楽器が演奏される。さらに今度は(C dur)の低音に変形拡大されて主題Cが現われ、管弦総奏で言いようもなく盛り上がって、挙句の果てには楽しい付点4分音符までお目見えすれば、もう、もうクライマックスを形成するしか、道が残されていないではないか!まて、落ち着くんだ。

ABCをもう一度繰り返し

A'(205-264)

・再びAの冒頭が登場するが、主題AはYの途中で農民の粗野な転調で強引に(D dur)から(F dur)に戻ると、Aにおける主題の展開部まで間を飛ばして短く切りつめている。さらに管弦総奏の締めくくりにはいるとPrestoになり、速度を上げながら、(F dur)の属7の和音に到達、そのまま第4楽章に流れ込む。

2004/6/25

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